脈翅類(読み)ミャクシルイ(その他表記)nerve-winged insect
lacewing

デジタル大辞泉 「脈翅類」の意味・読み・例文・類語

みゃくし‐るい【脈×翅類】

アミメカゲロウ目(脈翅目)の昆虫総称。柔軟なかむ口をもち、触角は長く、はねは膜質で脈が多い。翅脈の端が細く分かれる扁翅へんし亜目のクサカゲロウウスバカゲロウツノトンボ、翅が幅広広翅亜目ヘビトンボセンブリ、翅に縁紋のあるラクダムシ亜目に分かれる。完全変態幼虫は水生または陸生で肉食性のものが多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「脈翅類」の意味・わかりやすい解説

脈翅類 (みゃくしるい)
nerve-winged insect
lacewing

昆虫綱の1目または1上目。この名称はリンネが1758年に,一群の昆虫に対して多数の翅脈をもつという意味の脈翅目Neuropteraを設定したのに始まる。その後,系統の研究の進歩によってカゲロウ類,トンボ類,カワゲラ類,シリアゲムシ類,トビケラ類などは脈翅目から除外され,それぞれ独立した別の目として扱われるようになった。こうして脈翅目はリンネの使った意味で用いられなくなり,現在では完全変態類に属し,成虫では一般に以下のような特徴をもつグループをいう。

 体は軟らかく,口器は咀嚼口式(そしやくこうしき)で吻(ふん)状に突出しない。膜質でレース模様の翅を有し,前翅と後翅はほぼ同形同大で,静止時は背部で屋根形にたたむ。このような脈翅目は次の3亜目に分類される。ラクダムシ亜目Raphidiodea(ラクダムシのみを含む),広翅亜目Megaloptera(センブリヘビトンボを含む),扁翅亜目Planipennia(コナカゲロウカマキリモドキヒメカゲロウクサカゲロウウスバカゲロウツノトンボなどを含む)。近年では,この三つの亜目を独立の目として,3目を合わせて脈翅上目と扱うこともある。いずれにしても,これらは共通の祖先に由来するまとまった分類群であると見なされている。世界から約4700種,日本には約150種が記録され,形態は多様でカマキリやトンボと見誤るような種がある。

 成虫はおもに夜間に活動し,飛翔(ひしよう)は緩慢なものが多い。寿命は広翅亜目では数日~10日であるが,他のものでは長くて2~3ヵ月に及ぶ。産卵数は多く,カマキリモドキやクサカゲロウでは3000個を超える例がある。卵はだいたい長楕円形であるが,クサカゲロウの卵は糸状の柄をもちうどんげとして知られている。幼虫は広翅亜目と一部の扁翅亜目では水生,他は陸生,カマキリモドキの幼虫のように寄生生活を行うものもあるが,大部分は植物体や地表で自由生活を行い小昆虫類を捕食する。ラクダムシ亜目では10~11回,広翅亜目では4回,扁翅亜目ではほぼ3回の脱皮を経てさなぎとなるが,扁翅亜目だけは,マルピーギ管から絹糸を分泌して繭を形成し,その中でさなぎになる。

 害虫を含まず,人間とは直接かかわりはないが,ヒメカゲロウ,クサカゲロウなどはアブラムシ,カイガラムシその他の農林害虫に対する有力な天敵である。ヘビトンボの幼虫はマゴタロウムシ孫太郎虫)と呼ばれ,薬用に供されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「脈翅類」の意味・わかりやすい解説

脈翅類
みゃくしるい

完全変態をする昆虫のなかで比較的原始的な一群Neuropteraをいう。これにはヘビトンボとセンブリの属する広翅(こうし)類、ラクダムシ類、扁翅(へんし)類の3群が含まれるが、狭い意味では第三の扁翅類のことをさすことがある。この類の成虫は陸生であるが、幼虫も広翅類と一部の扁翅類が水生で腹節の両側に気管鰓(さい)をもつのを除けば、陸生であって、獲物に鋭い大あごを突き刺し体液を吸う。成虫のはねは脈がかなり多くて横脈で多少とも網状にくぎられ、脈には多くは毛がある。触角は糸状が多いが、櫛(くし)状や数珠(じゅず)状のこともあり、先がすこし膨れたツノトンボ類のようなものもある。目はかなり大きく、クサカゲロウなど一部の種では単眼3個を備える。脚(あし)は細く、跗節(ふせつ)は5節。幼虫は頭が大きいことが多く、よく動き、大あごと小あごは長くて突出し、大あごの内側に沿う溝に小あごが密着し、吸管の役目を果たす。三齢を経て蛹(さなぎ)になるのが普通で、蛹化(ようか)前に尾端から糸を出して卵形ないし紡錘形の繭をつくる。糸はマルピーギ管末端から出されるといわれる。蛹は裸蛹で運動可能であり、羽化前に繭から脱出するものもある。

 世界におよそ1万種が知られるが、初めの二類は少数で、扁翅類が大部分を占め、コナカゲロウ、カマキリモドキ、ヒメカゲロウ(クサカゲロウを含む)、ウスバカゲロウ(ツノトンボを含む)の四類に大別される。このうちウスバカゲロウの幼虫はアリジゴクとして知られ、寄生性のカマキリモドキは過変態をすることが知られている。

[中根猛彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「脈翅類」の意味・わかりやすい解説

脈翅類
みゃくしるい
Neuroptera

脈翅目 (アミメカゲロウ目) に属する昆虫の総称で,完全変態を行う。成虫は陸生で,2対のには網のように分岐した縦脈と多数の横脈があるが,まれに後翅の退化したものもある。肉食で咀嚼型の口器をもち,大顎が発達する。複眼は大きく突出し,単眼は3個,または完全に欠如する。触角は糸状あるいは棍棒状であるが,櫛歯状やじゅず状のものもある。肢の 跗節は5節。前後の翅はほぼ同形同大または後翅が小さく,後翅には折りたたまれる臀垂はない。幼虫は陸生または水生。口器は特殊化し,大顎の下面に溝があり,それに小顎が重なって吸収管となり,これで捕えた獲物を刺し,その体液を吸収する。8本あるマルピーギ管のうち6本は肛門絹糸腺となり,蛹化の際絹糸を出して繭をつくる。ウスバカゲロウクサカゲロウなど世界で約 5000種が知られている。 (→昆虫類 )  

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百科事典マイペディア 「脈翅類」の意味・わかりやすい解説

脈翅類【みゃくしるい】

昆虫綱の1群。前後翅は普通ほぼ同じ形で,膜質透明。翅脈は網状。完全変態をする。肉食で大顎が発達。ウスバカゲロウ,クサカゲロウ,ツノトンボ,ヘビトンボ,カマキリモドキなどを含む。脈翅類を目の1単位として扱うことが多かったが,最近では複数の目に細分する分類法がとられることも多い。

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