改訂新版 世界大百科事典 「テナガコガネ」の意味・わかりやすい解説
テナガコガネ (手長黄金)
Cheirotonus macleayi
甲虫目コガネムシ科の昆虫。胸部は暗緑色,上翅は黒銅色で黄褐色の斑紋を散在する。雄は名のように前脚が著しく長く,胸部の両縁に黄色の長毛を密生する。大型の個体は体長60mmを超す。アッサム,シッキム,ブータンから中国を経て台湾まで分布する。台湾産のものはタイワンテナガコガネC.m.formosanusといわれる。台湾の中部山地に分布し,樹液に集まるほか,灯火に飛来する。幼虫はクスなどの朽木を食べて成育し,朽木の中で蛹化(ようか),成虫となって出現する。テナガコガネ属はテナガコガネ亜科に属し,この亜科の雄はすべて前脚が長い。テナガコガネ属はアジア大陸に分布し,本種のほか,シナテナガコガネC.davidi,パリーテナガコガネ(ニシキテナガコガネ)C.parryiなどが知られる。シナテナガコガネは中国大陸に,パリーテナガコガネはインド東部,ミャンマー,インドシナ半島,マレー半島にそれぞれ分布する。
近年,沖縄本島で,この属の新種が発見され,ヤンバルテナガコガネC.jambarと命名された。本種はテナガコガネとほぼ同大で,日本最大の甲虫である。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報