テリハノイバラ
てりはのいばら / 照葉野茨
[学] Rosa luciae Fr. et Rochebr.
Rosa wichuraiana Crépin
バラ科(APG分類:バラ科)の落葉低木。地面を茎がはい、他物に寄りかかって高く懸垂することもある。枝は緑色で無毛。刺(とげ)は多くはないが、鉤(かぎ)状で他物にかかりやすい。葉は5~9枚の小葉からなり全長4~9センチメートル、光沢があり、表面は濃緑色または緑色、裏面は淡緑色または黄緑色。6~7月、枝の先に数個の花をつけ、ときに大きい円錐(えんすい)花序をつける。花は純白色で、花弁は5枚、弁先はへこみ、倒卵形で平開する。雄しべは多数で濃純黄色、雌しべは花柱が合生し有毛である。甘い香りがある。果実は卵球形で光沢があり、熟して紅色の美果となる。本州から九州、および朝鮮半島、中国、台湾、フィリピンに分布し、海岸、草原などの陽地に多い。
葉が照り輝くのでテリハノイバラの名があり、19世紀末フランス、アメリカに導入され、観賞用ツルバラの基礎をつくった。別名ハイイバラ、ハマイバラ、トックリイバラ、ツシマイバラともいう。
[鈴木省三 2020年1月21日]
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「テリハノイバラ」の意味・わかりやすい解説
テリハノイバラ
本州〜沖縄の日当りのよい河原や海岸などに多いバラ科の落葉低木。枝はよくのびて地をはい,とげがある。葉は羽状複葉で,広楕円形の小葉は5〜9枚あり,無毛で堅く,上面には強い光沢がある。6〜7月,花はふつう少数ついて,白色5弁で径3cm内外。果実は卵状楕円形で長さ約1cm,赤熱する。名前は葉の光沢による。
→関連項目ノイバラ|バラ(薔薇)
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テリハノイバラ(照葉野薔薇)
テリハノイバラ
Rosa wichuraiana
バラ科の落葉低木。本州中部以西,四国,九州に分布する。日当りのよい平地,丘陵地,ことに川原や海岸に多くみられる。全体にノイバラによく似ているがつるが長く伸び,奇数羽状複葉の各小葉は革質で表面に光沢がある。小葉の数も5~9個とノイバラより1対ほど多いのが普通である。5~7月に,円錐花序に径約 4cmの5弁の白色花を数個つける。果実は長球形で,赤く熟する。
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世界大百科事典(旧版)内のテリハノイバラの言及
【ノイバラ】より
… 日本には,ノイバラのほかに,野生のバラが10種ほど知られている。そのうち,本州,四国および九州で,ノイバラとならんで普通にみられるのがテリハノイバラR.wichuraiana Crép.(英名memorial rose)で,茎ははい,葉はより厚く光沢があり,花はノイバラより大きく径3cmになり,海岸や荒地に多い。関東地方西部以西と四国の山地に生えるフジイバラ,九州まで分布するモリイバラ,近畿地方,四国および九州の太平洋側に多いヤブイバラ(ニオイイバラともいう),それに北陸,近畿および中国地方と四国や九州の北部にあるミヤコイバラは互いによく似ており,別種にされることもあるが,R.luciae Franch.et Rochebr.にまとめられて,それぞれ変種として取り扱われることもある。…
【バラ(薔薇)】より
…瘦果(そうか)は肉質の花床に包まれる。北半球の亜寒帯から熱帯山地にかけて分布し,日本には[ノイバラ],テリハノイバラ,ヤマイバラ,タカネバラ,サンショウバラ,ナニワイバラ,[ハマナス](イラスト)など十数種が野生する。
[昔の園芸種とその原種]
ギリシア・ローマ時代には,西アジアからヨーロッパ域の野生バラや,それの自然交雑と推定される花の目だつ変り物がよく栽培されていた。…
※「テリハノイバラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」