ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ディートン」の意味・わかりやすい解説
ディートン
Deaton, Angus S.
アメリカ合衆国・イギリス国籍の経済学者。フルネーム Angus Stewart Deaton。ケンブリッジ大学で 1967年経済学の学士号,1971年修士号および 1974年博士号を取得。1976年から 1983年までブリストル大学で計量経済学の教授として教鞭をとるかたわら,1979~80年アメリカのプリンストン大学の客員教授も務め,1983年に同大学の終身在職権を取得した。開発経済学の分野におけるディートンの最初の大きな貢献は,20世紀初頭からの 70年間のイギリスにおける消費者需要の変化を,新しい消費者需要モデルを用いて分析したことだった。これによりディートンは 1978年,経済学誌『エコノメトリカ』の発行者からフリッシュ・メダルを授与された。1980年,ディートンは共同研究者とともにこの研究をさらに発展させ,新しい「ほぼ理想的な需要システム」(AIDシステム)と呼ばれるモデルを考案した。消費者貯蓄の実証研究では,所得ショックを受けても消費行動に大きな変化は生じないという不可解な事実を発見。のちに,この現象は「ディートン・パラドックス」と呼ばれるようになり,経済学における消費者行動の入念な理論研究と実証研究がともに急速に発展するきっかけをつくった。1983年,プリンストン大学のドワイト・D.アイゼンハワー国際関係論教授および同校ウッドロー・ウィルソン・スクールの経済学および国際関係論教授に就任。2001年世界銀行のチーフエコノミスト顧問,2007年世論調査会社ギャラップの上級研究員,2009年アメリカ経済学会会長を歴任。2015年には「消費と貧困,福祉の分析」への貢献により,ノーベル経済学賞(→ノーベル賞)を受賞した。
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