巨大IT(情報技術)企業に、取引先企業との契約条件の開示やトラブルへの対処状況の報告などを義務づけた法律。正式名称は「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(令和2年法律第38号)。2020年(令和2)に成立し、2021年に施行された。「取引透明化法」ともよばれる。巨大IT企業が市場を寡占しやすいネット商店街(オンライン・モール)、アプリ・ストア、ネット広告は、国民の暮らしや日本経済への影響が大きいと判断したもので、巨大IT企業を「特定デジタルプラットフォーム提供者」に指定し、透明で公正な取引を促し、弱い立場の中小・零細事業者を守るねらいがある。巨大IT企業への規制については、ヨーロッパ連合(EU)が個人データを保護する一般データ保護規則(GDPR)、オンライン仲介・検索サービス事業者に公平性・透明性を求めるP2B規則(プラットフォーム規制)、市場寡占を規制するデジタル市場法(DMA)、違法コンテンツやフェイクニュースを規制するデジタルサービス法(DSA)などを導入して先行している。
同法はオンライン・モール運営事業者(国内売上高3000億円以上)、アプリ・ストア運営者(同2000億円以上)、オンライン広告表示事業者(同1000億円以上)、オンライン広告仲介事業者(同500億円以上)を特定デジタルプラットフォーム提供者に指定。アマゾン・ジャパン、楽天グループ、ヤフー、グーグル・グループ、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、アップル・グループの6事業者を指定した。そのうえで取引先との契約条件のほか、契約変更・解除の事前通知、事業データの利用範囲や検索順位の基準に関する情報提供などを義務づけた。ネット広告では、第三者による広告効果の測定、料金体系の開示や変更時の事前通知を義務づけ、苦情対応の窓口設置を求め、クリック数を水増しして高額広告料を請求するアドフラウド(広告詐欺)を防ぐ。特定デジタルプラットフォーム提供者は年度ごとに、事業概要や苦情への取り組み状況などをまとめて報告し、政府は毎年、これを評価・公表。順守しない場合、政府は勧告・命令し、命令に従わない場合、100万円以下の行政罰などに処す。独占禁止法違反のおそれがある場合、公正取引委員会に対処を要請する。
[矢野 武 2022年12月12日]
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