改訂新版 世界大百科事典 「トクビレ」の意味・わかりやすい解説
トクビレ (特鰭)
カサゴ目トクビレ科に属する海産魚の総称,またはそのうちの1種を指す。トクビレ科は日本近海に24種が分布する。トクビレの名は雄の背びれやしりびれがとくに大きいことに由来する。英名はporcher。トクビレPodothecus sachiはサチ,ワカマツともいう。また,断面が八角形に近い形なのでハッカクともいう。日本海側は富山湾,朝鮮半島東岸以北,太平洋岸は塩釜以北北海道まで分布する。細長い体は硬い骨質板で覆われ角ばること,長い吻(ふん)の下面や口のまわりにはやや長いひげの集団があり,第2背びれとしりびれが非常に長いことが特徴である。大きさは雄が全長50cmになるのに対し,雌は35cm程度にしかならない。第2背びれやしりびれも雄はたいへんに長いが,雌は短いため,昔は別種にされていたこともある。トクビレの生態はほとんどわかっていないが,胸びれを使って海底をはうといわれる。また皮をはいで刺身にすることがある。
執筆者:谷内 透
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報