日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラギス」の意味・わかりやすい解説
トラギス
とらぎす / 虎鱚
sandperches
硬骨魚綱スズキ目トラギス科魚類の総称、またはそのなかの1種。この科の魚は、世界中の温帯から熱帯へかけての海域に広く分布し、日本では本州の中部地方以南から24種ほどが知られている。体は細長く延長し、円筒形。体形はハゼに似るが、腹びれは長く、ハゼのように吸盤状でない。背びれと臀(しり)びれの基底は長い。体色は赤、黄、紫など色彩豊かなものが多い。水深300メートル以浅の岩礁、サンゴ礁、砂、砂泥底にすみ、小形の底生動物を食べる。底引網、手繰(てぐり)網などで漁獲され、練り製品の原料となる。体長は普通20センチメートル以下である。
和名トラギスParapercis pulchella(英名rosy grubfish)は、千葉県、新潟県から九州南岸までの日本沿岸、台湾、朝鮮半島、西太平洋からインド洋に広く分布する。体は赤褐色で、6本の暗褐色横帯がある。幅広い青色の1縦帯が体の中央部を走る。頭と吻(ふん)に濃青色の細い帯が横切る。頭の腹面に数個の小黒斑(しょうこくはん)がある。体側の縞(しま)模様からトラハゼともよばれる。海岸よりすこし沖合いの岩礁域の砂礫底(されきてい)にすむ。甲殻類、ゴカイ類、小形魚類を食べる。体長18センチメートルぐらいになる。肉は淡泊で、てんぷらの材料になるが、普通は練り製品の原料にされる。カレイ釣りの外道(狙っているもの以外の魚が釣れてしまうこと)として知られる。
[尼岡邦夫]