日本大百科全書(ニッポニカ) 「トレンド調査」の意味・わかりやすい解説
トレンド調査
とれんどちょうさ
trend study
社会調査の一技法。調査対象を定義し、その定義に該当する者を標本(サンプル)抽出して、一定期間ごとに調べる調査である。調査対象集団の時間的な変化の傾向を把握する目的で実施される。「動向調査」「傾向分析」などとよばれることもある。5年ごとに行われる国勢調査や、毎年小学6年生と中学3年生を対象とする全国学力テストのほか、一定期間内に結婚した人に対する結婚意識調査、マンション購入希望者を対象とするマンション調査などが該当する。国政選挙の序盤、中盤、終盤での有権者の投票意識の時間的変化を探るトレンド調査もある。政府統計や民間調査機関が実施する調査のうち、もっともポピュラーな調査がトレンド調査といえる。得られたデータを時系列データとよび、時間的な変化分析に使われる。トレンド調査では、調査対象の定義は変化しないものの、対象の個人(標本となる個体)は変化している。
社会調査は大きく、一定期間をおいて繰り返し同じ調査を行う縦断的調査longitudinal studyと、ある時点での男女別、年齢別、収入別などの集団の意識や実態を総合的に分析する横断的調査cross-sectional studyの二つに分かれる。トレンド調査は縦断的調査の一種である。トレンド調査以外の縦断的調査には、同じ時期に生まれた人など特定集団のなかからサンプル(標本)を選び、一定期間ごとに同じ調査を繰り返すコーホート調査や、調査対象を厳格に固定して追跡調査を行うパネル調査がある。トレンド調査の対象となる個人は調査ごとにほぼ完全に異なるのに対し、コーホート調査では標本となる個人や集団が入れ替わることがあり、パネル調査ではまったく同じ個体を追跡し続けるという違いがある。
[矢野 武]