ドゴン(読み)どごん(その他表記)Dogon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドゴン」の意味・わかりやすい解説

ドゴン
どごん
Dogon

西アフリカのマリ共和国とブルキナ・ファソ(旧オートボルタ)の国境地帯、バンディアガラ山塊を中心とする地域に居住するネグロイド系民族。人口約25万。その言語ドゴン語はコンゴコルドファンニジェール・コンゴ)語族ボルタ系諸語に属する。トウジンビエイネトウモロコシなどを主作物とする農耕民であり、10世紀から13世紀ごろまでの間に、イスラム化を避けて、西方から現在の居住地に移住してきたとみられる。その社会は、父系の紐帯(ちゅうたい)を基盤とし、4(または5)あるとされる部族集団は、クラン氏族)、リネージ(系族)、拡大家族へと分節化される。村は複数のリネージからなり、いくつかの村が集まって、最大の政治単位である村群を形成する。最年長の男性がその長となり、種々の祭祀(さいし)と儀礼をつかさどるが、政治的な権力はもたない。政治的決定は彼を含む長老団の合議によってなされる。宗教は、農作業や機(はた)織りのような日常的活動にまで浸透している。壮大かつ精緻(せいち)な宇宙論の体系と、それに基づく多彩な儀礼を特徴とする。その細部については、1930年代初頭から、フランス人研究者によって詳細を極めた調査が行われ、アフリカ研究において重要な一分野をなすに至っている。

[渡部重行]

『M・グリオール著、坂井信三・竹沢尚一郎訳『水の神――ドゴン族の神話的世界』(1997・せりか書房)』『西村滋人著『バンディアガラ山地のドゴン族』(『民族探検の旅 6 アフリカ』所収・1977・学習研究社)』『M・グリオール、J・ディテルラン著、坂井信三訳『青い狐――ドゴンの宇宙哲学』(1986・せりか書房)』

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