ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドレフュス」の意味・わかりやすい解説
ドレフュス
Dreyfus, Alfred
[没]1935.7.11. パリ
ユダヤ系のフランスの軍人,陸軍将校。「ドレフュス事件」の中心人物。富裕なユダヤ人織物製造業者の子として生れた。 1882年エコール・ポリテクニクに入学,のち職業軍人となって,89年陸軍大尉に昇進。 94年陸軍省勤務中,軍事情報をドイツ側に通報した手紙の犯人と認定され,軍籍位階の剥奪,無期流刑に処された。しかしその後,その無罪を証明するのに有利な証拠が発見され,『オーロール』紙上の É.ゾラによる公開文「私は弾劾する」をはじめ,再審要求運動が活発化し,反ユダヤ人主義の国家主義者たちも反撃の大論陣を張り,事件は政治闘争に転化した。 1906年7月ドレフュスの無罪が最高裁判所によって確定され事件は落着し,同月 22日ドレフュスは正式に復権し,レジオン・ドヌール勲章を授けられた。この事件は,反ユダヤ人主義,反ドイツの右翼陣営と反軍国主義,共和制,人権擁護の左翼陣営との間の根深い対立を露呈し,両陣営とも著名な文学者を巻込んで,第三共和政とフランスの近代史に大きな影響を与えた。
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