改訂新版 世界大百科事典 「ドーマル」の意味・わかりやすい解説
ドーマル
René Daumal
生没年:1908-44
フランスの詩人,作家。アルデンヌ県生れ。ランスでのリセ(高等中学校)時代にジルベール・ルコントRoger Gilbert-Lecomte(1907-43),R.バイヤンらと知りあい,若い詩人たちのグループを形成。やがてパリに出て,1928年に機関誌《大いなる賭》を創刊し,その同人中の指導的存在となる。早くからシュルレアリスムの影響下にあり,ブルトンらとも交流をつづけたが,生来の形而上学的傾向において一線を画した。サンスクリット文学の研究,ネルバルやランボーの読書,さらにグルジェフらとの交流を通じて,独自の神秘主義的思想に到達し,それにもとづく〈修行〉を試みるまでになる。その間の詩集に《反-天空》(1936),《黒い詩,白い詩》(1954)などがある。結核と貧窮のゆえに悲惨な晩年を送ったが,絶筆となった未完の小説《類推の山》(1952)のうちに,真摯にして素朴な西欧的〈見者〉の相貌がのぞいている。
執筆者:巖谷 國士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報