バイヤン(読み)ばいやん(その他表記)Edouard Marie Vaillant

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイヤン」の意味・わかりやすい解説

バイヤン(Edouard Marie Vaillant)
ばいやん
Edouard Marie Vaillant
(1840―1915)

フランスの社会主義者。理学医学を修め、ドイツに学ぶ間に社会主義者となり、第一インターナショナルに加盟した。第二帝政崩壊の前後、パリの革命運動で活躍、1871年のパリ・コミューンに際しては議員に選ばれ、公教育を担当した。敗北後ロンドンに亡命し、一時マルクスと親しくなったが、のちブランキ派の組織に加わった。1880年、大赦によって帰国、この党派の指導者の一人となり、1889年の分裂ののち、残留して大衆政党への転換を指導した。1899年、社会主義者ミルランがワルデック・ルソー内閣に入る際、閣内にコミューン弾圧の責任者ガリフェ将軍がいたことから、強硬な反対論を唱えたが、終始社会主義各派の取りまとめ役を務め、1905年の統一社会党成立以後、ジョレスとともにその代表的指導者となった。また労働組合運動の発展に尽力し、労働総同盟を外部から擁護したことから「総同盟の祖父」と称された。

[相良匡俊]


バイヤン(Roger Vailland)
ばいやん
Roger Vailland
(1907―1965)

フランスの小説家。シュルレアリスム周辺の小雑誌に拠(よ)って詩人として出発。第二次世界大戦中はレジスタンスに参加、従軍記者として連合軍に加わった。レジスタンスという連帯活動のなかにあっても、個人主義的快楽追求を忘れぬ主人公を描いた『奇妙な遊び』Drôle de jeu(1945)でアンテラリエ賞を受賞。一時共産党に籍を置き、イデオロギー闘争と恋愛の矛盾をテーマに多くの小説を書く。ゴンクール賞受賞の『掟(おきて)』La Loi(1957)、朝鮮戦争でのアメリカの責任を問う戯曲『フォースター大佐の服罪』(1952)などがある。

稲田三吉

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改訂新版 世界大百科事典 「バイヤン」の意味・わかりやすい解説

バイヤン
Édouard-Marie Vaillant
生没年:1840-1915

フランスの社会主義者。ドイツで医学をおさめ,フランス第二帝政下にインターナショナルに加盟。1871年コミューン議員となり,教育担当相として活躍した。その壊滅後,亡命地ロンドンでブランキ派と親交をもち,80年特赦による帰国後は同派の指導者の一人となる。84年パリ市会議員に当選,93年からはパリ第20区選出下院議員として死ぬまで活躍,同時に出身地シェール県にも社会主義組織を根づかせた。反教権主義や常備軍廃止などブランキの思想継承を唱えたが,同時にマルクス主義にも理解のあった彼は,そのフランスへの適用を考え,ゲード派とほぼ一貫した友好関係を保ち,ブルジョア政党とのいっさいの協力を排する革命派の立場をとった。だが統一社会党成立後は,ジョレスと行動をともにした。労働総同盟(CGT結成にあたっては推進役をも果たし,〈CGTの父〉ともいわれる。しかし第1次大戦勃発後は,祖国防衛の愛国主義的立場をとった。
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バイヤン
Roger Vailland
生没年:1907-65

フランスの作家。オアーズ県の生れ。シュルレアリスト,ジャーナリスト,共産党員(後にハンガリー事件で脱党)など,いろいろの〈季節(セゾン)〉を経,また小説,戯曲,エッセーなど多様なジャンルを手がけている。しかし,それらに共通して,体質のような18世紀流の自由思想,快楽主義と,だからこそそれを制御しようとする厳しいモラリスム,いいかえると個人主義と社会主義,芸術と政治の矛盾・相克のドラマがみられる。その点,小説ではデビュー作でレジスタンスを扱った《奇妙な遊び》(1945)やゴンクール賞受賞作《掟》(1957),反宗教の戯曲《エロイーズとアベラール》(1947),師と仰いだラクロ自身に語らせた形式の《ラクロ論》(1953),死後発刊されたエッセーの集大成《内的記述》(1968)などにバイヤンの面目は躍如としている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バイヤン」の意味・わかりやすい解説

バイヤン
Vailland, Roger François

[生]1907.10.16. エーヌ
[没]1965.5.12. アン
フランスの小説家。パリ大学で哲学を学ぶ。シュルレアリスム系の雑誌『大いなる賭け』 Le Grand Jeu (1925) の創刊に参画。第2次世界大戦中は従軍記者,次いで対独レジスタンスの闘士として活躍,その体験を最初の小説『奇怪な遊び』 Drôle de jeu (45,アンテラリエ賞) に描いた。作品はほかに,人間の欲望と感性のメカニズムを冷静な筆致で描き出した小説『やりぞこない』 Les Mauvais coups (48) ,『ボー・マスク』 Beau masque (54) ,『32万 5000フラン』 325,000francs (55) ,『掟』 La Loi (57,ゴンクール賞) ,『祝祭』 La Fête (60) など。戯曲『エロイーズとアベラール』 Heloïse et Abélard (50,イプセン賞) など。また死後出版の『内的記録』 Écrits intimes (68) は,この作家に新たな評価を与えている。

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世界大百科事典(旧版)内のバイヤンの言及

【ドーマル】より

…アルデンヌ県生れ。ランスでのリセ(高等中学校)時代にジルベール・ルコントRoger Gilbert‐Lecomte(1907‐43),R.バイヤンらと知りあい,若い詩人たちのグループを形成。やがてパリに出て,1928年に機関誌《大いなる賭》を創刊し,その同人中の指導的存在となる。…

※「バイヤン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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