日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドーリス様式」の意味・わかりやすい解説
ドーリス様式
どーりすようしき
古代ギリシア美術の様式の一つ。建築では、イオニア様式、コリント様式と並ぶギリシア三柱式(オーダー)の一つ。ドーリス人が定住したペロポネソス半島およびその植民地の南イタリアに開花し、のちギリシア全域に広がった。その特徴は建築と彫刻に明瞭(めいりょう)で、イオニア様式が小アジアに生まれ、オリエントの影響下に優美な様式を示すのに対し、ドーリス人は簡素を好み、素朴で秩序ある様式を発展させた。たとえば建築では、イオニア式の柱頭装飾が優美な渦巻文を形づくっているのに比べ、ドーリス式では平鉢形のエキノスとその上に方形のアバクスをもつだけで、強いエンタシス(膨らみ)を示す柱身は太く短く、基台には柱礎を欠いている。また彫刻では、着衣の女性像よりも筋肉質の裸体の男性像を好んで制作し、人体の有機的構成を重視した。
[前田正明]