オーダー(読み)おーだー(英語表記)order

翻訳|order

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オーダー」の意味・わかりやすい解説

オーダー
おーだー
order

建築用語。「柱式(ちゅうしき)」と訳される。ギリシアローマ建築の柱と梁(はり)の組合せの形式、その各部分と建築全体の比例率、柱頭装飾などをさす。オーダーはそれが生まれた地域、時代によって異なる。古代ギリシアにおいてはドーリス式、イオニア式コリント式の3柱式が用いられ、ローマ時代にはこれらのギリシアの柱式のほかに、トスカナ式ならびにコンポジット式を加えた。

[前田正明]

ドーリス式オーダー

ギリシア建築でもっとも古く、現存の建築ではオリンピアのヘラ神殿(前7世紀中葉)が知られる。柱は柱礎を欠き直接スティロバテスの上に立つ。柱身は太く、上部に向かうにしたがって細くなり、エンタシスとよばれる胴の膨らみが顕著。柱頭は浅い鉢型のエキノスと正方形の板状アバクスからなる。梁の上のフリーズにはメトープと3条のトリグリフォスが交互に配され、メトープにしばしば浮彫りが施されている。このような形式の簡素雄勁(ゆうけい)なドーリス建築は、ドーリス人が住んだペロポネソス地方に始まり、やがて本土ならびに南イタリアに伝播(でんぱ)した。

[前田正明]

イオニア式オーダー

小アジアのイオニア諸地域に生まれた様式で、その特徴は全般に優美で、柱頭に二つの渦巻を組み合わせた装飾をもつ。柱身はドーリス式に比べて一段と細く柱礎をもつ。上部のフリーズはトリグリフォスがなく帯状である。

[前田正明]

コリント式オーダー

紀元前5世紀に初めて現れた建築様式。全体の構造はイオニア式に類似しているが、柱頭にアカンサス葉の華麗な装飾を用い、柱身は一段と細く優美となる。ヘレニスティック期からローマ時代に著しい開花をみた。

[前田正明]

トスカナ式オーダー

イタリア半島のトスカナ地方に発生したもので、エトルスク式オーダーともいう。基本的にドーリス式を踏襲しているが、柱身に溝彫りがなく、柱礎が加えられている点が異なる。

[前田正明]

コンポジット式オーダー

その名のとおり、イオニア式とコリント式の混合様式で、ローマ時代に考案された。イオニア式の渦巻とコリント式の葉飾りとを複雑に組み合わせた柱頭、および過剰なまでの装飾が特徴で、3世紀以降、ローマの記念門その他の大建築などに採用されている。

[前田正明]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オーダー」の意味・わかりやすい解説

オーダー
orders of architecture

建築用語。古代ギリシア・ローマ建築における様式の称であり,同時に柱の太さを基準として建物全体にわたる比例の体系をさす。特にルネサンス以降の古典様式の再興に伴って,このオーダーの適用における比例関係の考察が盛んに行われた。様式としては,ギリシアではドーリス式,イオニア式,コリント式の3種,ローマではこのほかに,エトルリア起源のトスカナ式,およびイオニア式とコリント式を融合させたコンポジット式の2種が行われた。これらの諸オーダーは,それぞれ古典建築の基本的性格を決定する重要な要素であり,ルネサンス建築以降,これらの基本的オーダーが再度用いられた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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