ナドソン(読み)などそん(英語表記)Семён Яковлевич Надсон/Semyon Yakovlevich Nadson

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナドソン」の意味・わかりやすい解説

ナドソン
などそん
Семён Яковлевич Надсон/Semyon Yakovlevich Nadson
(1862―1887)

ロシアの詩人。ユダヤ系の官吏の家に生まれる。早くに両親を失い、苦難の少年時代を過ごし、兵役について結核発病、早世した。プレシチェーエフに早熟な才能をみいだされ、影響を受けた。作品のおもなモチーフ抗議、無力感、幻滅疑惑であり、それは全能にして永遠の悪という世界認識によって生み成されたが、そこには理想的な美や自由への賛美の声も聞かれる。こうした分裂的傾向は時代の閉塞(へいそく)的状況の悲劇性と矛盾を反映すると同時に、同世代のインテリの心理を的確にとらえており、詩人自身の悲劇的相貌(そうぼう)と相まって、1人の人気詩人を生んだ。『前へ』(1878)、『詩人よ起(た)て』『われらの世代は青春を知らぬ』(ともに1884)などの作品がある。

島田 陽]

『神西清・池田健太郎訳『ナドソン詩集』『ナドソン遺稿詩集』(『世界名詩集大成12 ロシア』所収・1959・平凡社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナドソン」の意味・わかりやすい解説

ナドソン
Nadson, Semën Yakovlevich

[生]1862.12.26. ペテルブルグ
[没]1887.1.31. ヤルタ
ロシアの詩人。官吏の家庭に生れ,1882年に士官学校を卒業。子供の頃から詩を書き,85年に処女詩集を出版,プーシキン賞を受賞。 N.ネクラーソフの伝統を受継ぐ民主派詩人といわれ,正義の勝利と輝かしい未来への確信を表現した作品が多い。『前進』 Vperëd (1878) ,『わが友,わが同胞』 Drug moi,brat moi (81) などはその代表作。しかし,『あたりには夜のとばりが降りた』 Krugom legli nochnye teni (78) ,『われら青春を知らず』 Nashe pokolen'e yunosti ne znaet (84) などの作品は,ナロードニキ運動の挫折と政治的反動によって生み出されたインテリゲンチァのペシミスチックな気分を反映し,その憂愁を帯びた調子は,象徴主義の先駆となった。

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