ヌメリテンジクダイ(読み)ぬめりてんじくだい(その他表記)gelatinous cardinalfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌメリテンジクダイ」の意味・わかりやすい解説

ヌメリテンジクダイ
ぬめりてんじくだい / 滑天竺鯛
gelatinous cardinalfish
[学] Pseudamia gelatinosa

硬骨魚綱スズキ目テンジクダイ科ヌメリテンジクダイ亜科に属する海水魚。日本では八丈島、和歌山県白浜、屋久島(やくしま)、与論島(よろんじま)、南西諸島の海域から記録されているが、世界では台湾、オーストラリア東北部、フランス領ポリネシア、紅海、東アフリカなど太平洋とインド洋に広く分布する。体は細長く、伸長し、尾柄(びへい)部は細くて長い。体高は低く、体長のおよそ4分の1。尾柄高は頭長の2分の1以下。眼径は吻長(ふんちょう)よりすこし大きい。前鼻孔の鼻弁は長く伸びる。口が大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下を越える。上下両顎には大きい犬歯状の歯がある。上主上顎骨はない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の隆起線には鋸歯(きょし)がなく、後縁の隅角(ぐうかく)部に棘(きょく)がない。櫛歯(くしば)状の鰓耙(さいは)は上枝に1本、下枝に7本。体は小さい円鱗(えんりん)をかぶる。頭部の孔器は格子状に並ぶ。体側面に2本の側線があり、上のものは35~36枚の有孔鱗(ゆうこうりん)で、鰓孔(さいこう)の上端から第2背びれ後端付近まで走る。下のものは尾柄下部を走るが、不鮮明である。背びれは胸びれ基底上方から始まり、よく離れた2基で、第1背びれは6棘、第2背びれは1棘8~9軟条。臀(しり)びれは第2背びれ起部下方から始まり、2棘8~9軟条。胸びれは15~17軟条。尾びれ扇形で大きい。体は透明で、側面と頭部腹面は淡い金色~銀虹(ぎんこう)色。全体に多数の黒色素胞(こくしきそほう)が散らばる。鼻弁は黒い。尾びれは黒色で、縁辺は白く、ときには上部に不鮮明な黒色斑(はん)がある。その他のひれは透明。サンゴ礁の岩礁域に生息し、岩穴の奥に潜んでいることが多く、幼魚サンゴの間に見られる。夜行性で、日中見ることはまれである。群れをつくらない。全長10センチメートルほどになる。

 ヌメリテンジクダイ亜科には本種が属するヌメリテンジクダイ属のみが知られている。本属魚類はテンジクダイ科のクダリボウズギス亜科として取り扱われていたが、2014年(平成26)のDNAの分析結果から、魚類学者の馬渕浩司(まぶちこうじ)(1971― )とフレーザーThomas H. Fraserによって本属に対してヌメリテンジクダイ亜科が創設された。本亜科は、2本の不完全な側線があり、上の側線は有孔鱗で、鰓孔上端から第2背びれ後端付近まで、下の側線は尾柄部を走ることで特徴づけられる。本属には日本から本種以外に5種が知られている。そのうち本種はヒルギヌメリテンジクダイP. amblyuropteraに似るが、ヒルギヌメリテンジクダイは尾びれ基底上に眼径大の大きい黒色斑をもち、下枝鰓耙が多くて9~10本であることで区別することができる。

[尼岡邦夫 2022年11月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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