ドル外交(読み)ドルがいこう(英語表記)dollar diplomacy

翻訳|dollar diplomacy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドル外交」の意味・わかりやすい解説

ドル外交
ドルがいこう
Dollar Diplomacy

アメリカの第 27代大統領 W.タフト (在任 1909~13) と国務長官 P.ノックスが推進した外交政策。アジアおよびラテンアメリカにおいてアメリカの海外投資を奨励し,それによってアメリカ商品の進出を助けるとともに,その国におけるアメリカの政治的影響力を強めようとしたもの。タフトが教書のなかで自己の政策を「弾丸に代えるにドルをもってするものである」と述べてから,この名前が生れた。中国において満州 (現東北地方) の鉄道に対する国際借款団をつくり,アメリカ資本を中国に投資させようとした事件,同じ頃ニカラグアに対し武力による干渉を行なった事件は代表的な例。特にカリブ海地域に対してはドルと海兵隊による帝国主義的支配が強力に推進された。ドル外交は次の T.W.ウィルソン大統領の反対で次第に衰退し,1930年代にいたって F.ルーズベルト大統領の善隣政策に取って代られた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドル外交」の意味・わかりやすい解説

ドル外交
どるがいこう
dollar diplomacy

本来、「弾丸のかわりにドルを用い」て、アメリカの海外における政治的、経済的利害を増進することを目ざしたタフト政権(1909~13)の外交を特徴づける用語であったが、広義にはアメリカ帝国主義外交をさす。タフト政府が発足するや、新任のノックス国務長官は、ハンチントン・ウィルソンら国務省官僚の助言で国務省機構改革を断行し、グローバルな通商拡張政策を展開した。中国では、アメリカ銀行団、国務省、ストレイトWillard D. Straight(1880―1918)の三者の合作により門戸開放のための「ドル外交」を推進。満州鉄道借款、湖広鉄道借款などをめぐり列強協調あるいは抗争した。ノックスの満州鉄道中立化案、対華六国借款団参加もその一環である。また戦略的に重要なカリブ海地域を制するため、ドミニカ、ニカラグア、ハイチの金融的保護国化を画策し、中近東でも、トルコやペルシアで緒についたアメリカ資本進出を積極的に支援した。

[高橋 章]

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