改訂新版 世界大百科事典 「ノミバエ」の意味・わかりやすい解説
ノミバエ (蚤蠅)
humpbacked fly
双翅目ノミバエ科Phoridaeに属する昆虫の総称。ほとんど飛翔(ひしよう)せず,非常に活発に走る姿が,ノミを連想させることから由来した名である。系統的には,環縫亜目無額囊群に属し,ハナアブ(ショクガバエ科)と近縁である。世界で200属,2400種の記録があるが,日本ではほとんど研究されておらず,わずか二十数種が記録されているにすぎない。小型種が多く,体長1~5mm,翅脈に横脈がなく,前縁脈の基半部と径脈が太く,他は退化している。雌では無翅の種もある。幼虫はおもに腐敗した動物質を食べるが,キノコや他の昆虫に寄生する種も知られている。小笠原諸島には,アフリカマイマイをつぶして殺して地下数十cmに埋め,それに産卵する無翅の雌が生息している。ヨーロッパでは,墓地に埋葬した棺の中にまで入って繁殖する種がいる。これをカンオケバエConicera tibialis(英名coffin fly)と呼んでいる。日本でもっともふつうなオオキモンノミバエMegaselia spiracularisは,家屋内にもよく侵入し,台所のごみなどから発生する。成虫は,夏に窓ガラスの上などを走行しているのが観察される。
執筆者:篠永 哲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報