アフリカマイマイ(その他表記)Achatina fulica

改訂新版 世界大百科事典 「アフリカマイマイ」の意味・わかりやすい解説

アフリカマイマイ
Achatina fulica

殻の高さ15cmにも及ぶアフリカマイマイ科の大型のカタツムリ。東アフリカ中部原産で,20世紀に入って急速にインド,東南アジアから太平洋の諸島に広がり,農作物果樹を食害する害貝となった。殻は卵円錐形,殻表に紫褐色と黄白色の縦斑があるので英名agate snail(メノウマイマイの意),また通常,殻の高さ10cm,太さ5.5cmくらいになるのでgiant snailという。日本では奄美,沖縄および小笠原に侵入し害を与えている。これは1935年ごろ食用カタツムリと称して売買されたことがあり,それが野生化したもの。九州以北では冬寒冷なために越冬できない。生貝の持込みは禁止されている。またカントンジュウケツセンチュウの中間宿主なので生食は危険。なお,エスカルゴとはまったくの別物である。近縁のメノウアフリカマイマイA.achatinaは世界最大のカタツムリで殻の高さは19cmに及ぶ。
カタツムリ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフリカマイマイ」の意味・わかりやすい解説

アフリカマイマイ
あふりかまいまい
agate snail
D40giant snail
[学] Achatina fulica

軟体動物門腹足綱アフリカマイマイ科の巻き貝。陸産種で東アフリカ原産であるが、20世紀に入って急にインド、東南アジアなどに広がり、第二次世界大戦中は武器に付着して熱帯太平洋諸島まで及んだ。日本でも現在では奄美(あまみ)諸島から小笠原(おがさわら)諸島まで侵入し、菜園、果樹園、庭園草木を食害している。殻高100ミリメートル、殻径55ミリメートルになり長卵形。殻表は紫褐色と黄白色の縦斑(はん)があって、縞(しま)めのうのようである。殻口は大きく卵形で、外唇は薄く、軸唇下端に浅い湾入がある。繁殖力が強く、作物や観賞植物の食害が大きいばかりでなく、おもにネズミを宿主とし、まれに人間の脳に入って障害をおこすこともある広東住血線虫(カントンじゅうけつせんちゅう)を媒介する。このため小笠原などから本土への侵入を防ぐため厳しい規制が行われている。本種の全面駆除は薬品人力によってもきわめて困難で、アフリカでは肉食性の陸貝ゴナキシス・キベツエンシスGonaxis kibweziensis天敵として利用する防除法も試みられている。

[奥谷喬司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アフリカマイマイ」の意味・わかりやすい解説

アフリカマイマイ
Achatina fulica; African giant snail

軟体動物門腹足綱アフリカマイマイ科。殻高 10cm,殻径 5.5cmの大型のカタツムリ。殻は長卵形,螺塔は高く円錐形。殻表は紫褐色と黄白色の縦斑があり,瑪瑙 (めのう) 模様となる。殻口は大きく卵形で,外唇は厚くならない。軸唇の下端には浅い湾入がある。体は黒みを帯び,大きい後触角と小さい前触角があり,後触角の先には眼がある。東アフリカ原産であるが,いまでは熱帯に広く分布し,日本では沖縄,奄美群島小笠原諸島にすみつき,夜間活動して野菜や果実などを食害している。黄色の卵を数百個も産み,繁殖力も強い。そのため薬剤のほか,カタツムリを食べるカタツムリであるゴナキシス Gonaxis,オカヒタチオヒガイ Euglandina roseaなどを天敵として利用して駆除している。また広東住血線虫の中間宿主となる。また,農作物を食い荒す有害動物として本土への持込みは植物防疫法によって禁止されている。

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百科事典マイペディア 「アフリカマイマイ」の意味・わかりやすい解説

アフリカマイマイ

アフリカマイマイ科の陸生巻貝。大型のカタツムリで高さ15cm,幅5.5cmにも及ぶ。殻表に紫褐色と黄白色の縦斑がある。東アフリカ中部原産であるが,インド,太平洋の熱帯地方に広がり,日本では奄美群島・小笠原諸島に人為的に持ち込まれたものが野生化し,夜間活動して野菜や果樹を食害する。
→関連項目カタツムリ(蝸牛)

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世界大百科事典(旧版)内のアフリカマイマイの言及

【帰化生物】より

…人間が意識的に帰化を図って成功したものとしては,日本には,沖縄県が毒ヘビ,とくにハブの駆除を目的として,1910年にインドから移入し渡名喜島などに放したマングース,農林省が狩猟鳥を増やす目的で,19‐20年に中国南部から移入し,東京と神奈川に放したコジュケイ,同じく30年ころから数次にわたって朝鮮から移入し,北海道日高に放鳥したコウライキジ,カの駆除を目的に台湾から移入し,東京,千葉などで野生化している北アメリカ原産のカダヤシ(タップミノー),食用に中国から移入し,利根川水系で野生化しているソウギョなどがある。 偶然に帰化したものとしては,飼育していたものが逃げ出して定着したものに,1918年ころから食用に北アメリカから移入し,各地で養殖していたが,その一部が逃げ出して各地に野生化したウシガエル,そのウシガエルの餌として30年ころ神奈川に移入して養殖していたところ,大雨による出水で逃げ出して,付近の水田などに野生化し,しだいに各地に分布を広げたといわれる北アメリカ産のアメリカザリガニ,35年ころ食用に台湾から移入したものが,小笠原,奄美,沖縄などに野生化した,アフリカ原産のアフリカマイマイなどがある。また,愛玩用に飼育していたものが逃げ出して帰化したものに,北海道,岐阜の金華山などに野生化した韓国産のチョウセンシマリス,東京付近などに野生化したセキセイインコその他多数の飼鳥,動物園で飼育していたものが逃げ出して野生化したものに,伊豆大島,鎌倉などにすみついた台湾原産のタイワンリス,毛皮獣では第2次大戦中南アメリカから輸入し,各地で盛んに養殖していたが,その一部が逃げ出し,岡山その他に野生化したヌートリア,同じころ養殖されていたと思われ,東京の江戸川付近に定着している北アメリカ産のマスクラット,戦後毛皮獣として輸入され,養殖されていたものが逃げ出し,北海道で野生化した北アメリカ産のミンクなどがある。…

※「アフリカマイマイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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