改訂新版 世界大百科事典 「ノロドム」の意味・わかりやすい解説
ノロドム
Norodom
生没年:1836-1904
カンボジア国王。在位1860-1904年。カンボジアを東西からはさむタイ,ベトナム両国に対する恐怖から,1863年8月王はタイ人顧問の不在中にフランスと保護条約を締結したが,その後フランスとタイとの板ばさみで苦慮の末,同年12月同様の保護条約をタイと内密に結んだ。これを知ったフランスは王のタイへの渡航を阻止し,67年にタイの対カンボジア保護条約破棄とフランスのカンボジア保護権承認を内容とする条約をタイと結んだ。一方,国内では王弟の謀反など反乱が相次ぎ,この間67年には首都をウドンからプノンペンへ移した。77年フランスは行政改革の布告を王に出させたが,王が改革に消極的なため,84年に王の統治権を制限する新協約に強制的に署名させた。この強引な手口に国内各地で反仏蜂起が発生した。フランスは新協約の実施を一時延期し,蜂起は王の呼びかけで終息した。以後フランスは国家予算の管掌,内閣制度の創設,フランス人理事総監による閣議主宰,フランス領インドシナ連邦へのカンボジアの編入など,王の権限を骨抜きにしていった。
執筆者:石沢 良昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報