翻訳|Phnom Penh
カンボジアの首都。人口116万(2003)。メコン河口から約300km遡航した自然堤防上の河岸に開けた都市で,港は2500トンまでの船が横づけできる。プノンペンとはカンボジア語で〈ペンの丘〉を意味する。《王朝年代記》によれば,洪水のときに上流から仏像4体が流れつき,敬虔なペンという名の夫人がこの仏像を小さな丘の東斜面に安置したという。これが〈ペン夫人の丘の寺院〉説話で,プノンペン発祥伝説のもととなった。この丘は市の中心部から北へ1km,川に面した高さ30mほどの自然の小丘で,現在この丘の上に大きな仏塔が建ち,市民が参詣している。プノンペンでメコン川とトンレ・サップ川が合流し,これがすぐ下流でメコン川本流とバサック川に分流する。この4本の大河川にちなんで,プノンペンをかつては〈チャトムック(四つの面の町)〉とも呼称した。
古くはアンコール王都への外港であり,国内諸物産の集散地,河川交通の要衝であった。タイの侵略によりアンコール王都が放棄されてのち,1434年から半世紀にわたり首都となった。16世紀からは一種の自由貿易港の様相を呈し,外国人宣教師や各国の商人が来航した。国別になった外国人居留地ができ,近くに日本人町もあった。フランス保護領下で1867年再び王都となり,名実ともに政治,経済の中心地としての発展を始めた。当時の人口は推定で1万人,ほとんどが華僑とベトナム人で,河岸には無数の河船がつながれていたという。雨季になると市内の随所が冠水するため,1880年から浚渫船を使って大量の土砂を運び,埋立てを行った。また都市計画により広い道路と樹木,中央市場などが建設され,長年かかって小パリといわれる瀟洒な町に生まれ変わった。1913年河岸近くに現在に残る旧王宮が完成した。旧王宮を中心に,旧国会議事堂,諸官庁,博物館,名刹などが建ち,政府の中枢部が集まっている。1975年以降民主カンボジア政権のもとで無人化が強行され,瓦礫の山となり荒廃したが,ヘンサムリン政権下で80年から再び市民が段階的に戻り始めた。
執筆者:石沢 良昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
カンボジア中南部にある同国の首都。メコン川とその支流のトンレ・サップ川、バサック川がK字形に合流するその中心付近に位置する。人口116万9800(2003推計)。プノンペンとはカンボジア語で「ペンの丘」を意味し、市の中心にある、ペンという名の女性が仏像を拾って祭った丘(プノン)に由来する。1371年ころクメール人によって建設され、河川交通の要衝として栄えた。1434年から約半世紀の間、アンコールにかわってクメール王国の首都となった。1866年ふたたび首都となり、以後フランス領時代を通じてカンボジアの中心都市であった。1975年から5年間、ポル・ポト政権のもとで無人化が図られ荒廃したが、1980年以降は復興が進んでいる。
町はトンレ・サップ川右岸の台地上につくられ、かつては綿花、米の集散地としてにぎわい、北から欧人街、華僑(かきょう)街、ベトナム人街、カンボジア人街に分けられていた。独立後は市街は整備され、南北12キロメートル、東西2キロメートルの細長い町がトンレ・サップ、メコン両川に沿っている。町の区画は規則的で、フランス領時代からの伝統を受け継ぎ整然としている。鉄道駅から東に大通りがトンレ・サップ川まで延び、その通りの北には市庁、ペンの丘、公園などがあり、南には南北に走るポール・ベール街とシソワット波止場通りの間に、19世紀後半に建てられた王宮や国立博物館、国会議事堂、諸官庁などが並んでいる。また、市中の至る所にワット(寺院)がある。交通上は、カンボジアにおける国道網の中心をなすとともに、北西部のシソフォンおよびタイランド湾岸のコンポン・ソムへ延びる鉄道の起点である。また水運でも1908年フランスによって開港されて以来、喫水5メートルの船まで入港できる港があり、重要な機能をもっている。南西8キロメートルにプノンペン国際空港がある。
[菊池一雅]
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カンボジアの首都。メコン川とトンレサップ川が合流し二つに分かれる水路の要衝にあり,大航海時代には国際港市として繁栄。アンコール放棄後の15世紀に一時首都とされ,フランス保護下で再び首都とされて現在に至る。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…正称=カンボジア王国Kingdom of Cambodia 面積=18万1035km2人口(1996)=1027万人首都=プノンペンPhnom Penh(日本との時差=-2時間)主要言語=クメール語(カンボジア語)通貨=リエルRielインドシナ半島の南西隅に位置し,北海道の2倍強の面積をもつ国。カンボジアといえば,王国,敬虔な仏教徒,アンコール・ワットなどで知られていたが,1970年3月のシアヌーク元首の解任により,インドシナ戦争に大きく巻き込まれ,混乱と戦争が続き,鎖国,難民,首都プノンペンの無人化,虐殺という不可解な変事が続発した。…
※「プノンペン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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