ハタリス(読み)はたりす(英語表記)European souslik

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハタリス」の意味・わかりやすい解説

ハタリス
はたりす / 畑栗鼠
European souslik
[学] Citellus citellus

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目リス科の動物。同科ジリス属の1種で、小アジアとヨーロッパ南東部に分布する。体長19~23センチメートル、尾長6~8センチメートル。姿はマーモットに似ており、体が太く頑丈で、地下生活に適する。耳介と尾は短い。頬(ほお)に大きな頬袋をもつ。体色は、背側が灰褐色斑紋(はんもん)はなく、腹側は橙(だいだい)色を帯びた灰白色である。乾燥地帯、草原牧草地、耕作地などの開けた平地のほか、高地にも生息し、地中に巣穴を掘る。若い個体の巣穴は1本のトンネルとその奥の巣室だけの単純な構造であるが、年々拡張され、数個の出入口をもつ複雑な構造になる。ハタリスは一定の場所に集まり、社会的集団(コロニー)を形成して生活するが、巣穴は個体ごとにもつ。危険に出会うと、甲高い笛のような声を発してコロニーの仲間に知らせるなど、状況に応じてさまざまな声によるコミュニケーションが行われる。早朝と夕方、慎重にあたりの安全を確認してから巣穴を出て、種子、果実、根、牧草、昆虫、鳥卵などを食べる。夏から秋にかけて大量の食物を食べて体に脂肪をつけ、また食物の貯蔵も行う。11月から冬眠に入り、まだ食物の乏しい早春に冬眠から覚め、貯蔵食物を食べて過ごす。雌は28~30日の妊娠期間ののち、3月末から5月末にかけて、1産6~8子を産む。天敵はポールキャット、オコジョなどの食肉類猛禽(もうきん)類である。北アメリカジュウサンセンジリスなど、同属近縁種は約20種がある。

今泉吉晴

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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