日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーモット」の意味・わかりやすい解説
マーモット
まーもっと
marmot
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目リス科マーモット属に含まれる動物の総称。この属Marmotaの仲間は、太くずんぐりした体に短い尾をもった大形の地上生リスで、体長30~60センチメートル、尾長10~25センチメートル、体重3~7.5キログラムに達する。体色は明るい茶黄色から暗褐色。普通、草原の地中にトンネルを掘って巣とし、数頭から、ときに50頭を超す集団をつくって暮らす。木にはほとんど登らない。昼行性で、相互のコミュニケーションにさまざまな音声とにおいを使う。ヨーロッパ・アルプスなどの高山草原にすむアルプスマーモットM. marmota(単にマーモットともよばれる)のほか、ネパール、シッキムなどの高山にすむタルバガンM. bobak(ボバックともいう)、北アメリカのアラスカからアメリカ東部にかけてすむウッドチャックM. Monaxなど10種余りがユーラシアから北アメリカに分布する。いずれの種も植物の葉などの緑色部分をおもな食物とし、夏季に大量に食べて体に脂肪として蓄え、冬季はときに9か月に達する長い冬眠で過ごす。ほかにキノコ類、昆虫なども食べる。冬眠から覚めてすぐの4~5月に交尾し、雌は妊娠期間30~32日で普通2~5子を産む。子は6週間で巣穴から外に出るようになり、2年で性的に成熟する。アルプス地方ではマーモットの脂肪は胸と肺の病の良薬とされてきた。また、タルバガンの脂肪は皮革クリームとして優れる。マーモットのトンネル掘り活動は、土壌の通気性をよくするなど生態系維持のうえで重要な働きがあるが、農業や牧畜にはしばしば阻害要因として嫌われる。このため、マーモットは駆除の対象とされる。また、旧ソ連地域とアメリカでは肉と毛皮を目的に大量に狩猟されている。
[今泉吉晴]