改訂新版 世界大百科事典 「ハナダカトンボ」の意味・わかりやすい解説
ハナダカトンボ
Rhinocypha ogasawarensis
トンボ目ハナダカトンボ科の昆虫。体長約33mm,雄では黒色の体に赤色の太くて短い腹部をもつが,雌の腹部は褐色。小笠原諸島特産で天然記念物に指定されている。これに酷似した西表島特産のヤエヤマハナダカトンボも同島特産の貴重種である。ハナダカトンボ科Epallaginidaeのトンボは熱帯アジアおよびアフリカに多数の種類を産し,いずれも頭部の頭楯(とうじゆん)部が前方に突出しているので鼻高の名がある。渓流にすみ,幼虫は流水の石の下などに見られるが,尾部の3本のえらは棒状になっている。成熟成虫の雄は求婚の際に特有のダンス飛翔(ひしよう)を行い,雌は水中の腐木などに産卵する。日本産の2種はいずれも赤色系で翅が透明であるが,熱帯アジア産の種は青色斑を有するものが多く,また翅には青藍色の光沢があり,複雑な虹色の反射を示すものが多く,きわめて美しい。
執筆者:朝比奈 正二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報