日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハネダホタルジャコ」の意味・わかりやすい解説
ハネダホタルジャコ
はねだほたるじゃこ / 羽田蛍囃喉
Haneda's lanternbelly
[学] Acropoma hanedai
硬骨魚綱スズキ目ホタルジャコ科に属する海水魚。駿河湾(するがわん)から豊後(ぶんご)水道、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、東シナ海、台湾南部、東沙(とうさ)群島などの海域に分布する。体は長卵形で、側扁(そくへん)する。目は大きく、眼径はおよそ吻長(ふんちょう)に等しい。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下を越える。下顎は上顎より前方に突出する。上顎歯は絨毛(じゅうもう)状歯帯で、前端部の外列に4対(つい)、内列に1対の犬歯がある。下顎歯は1列で、先端部の1対と側歯は犬歯状。鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)は1列、口蓋骨の歯は前方部で2列と後方部で1列。肛門(こうもん)は臀(しり)びれ起部と腹びれ起部の中間付近に開く。鱗(うろこ)は大きく、弱い櫛鱗(しつりん)ではがれやすい。体色は背側が淡紫赤色で、腹側は銀白色。肛門は黒色。発光腺(せん)は長くて峡部から臀びれ始部のわずかに後方に伸びて、臀びれ直前で左右がつながるが、前端ではつながらない。発光腺のなかに発光バクテリアが共生する。バクテリアの出す光はレンズの役割をする乳白色半透明の筋肉層を通して拡散するので、腹部全体が青白く光ってみえる。水深100~250メートルの大陸棚の砂底や砂泥底付近に群れで生息する。最大体長は13センチメートルほどになる。オキアミ類、小形魚類、小形エビ類、イカ類などを食べる。底引網で多量に混獲され、練り製品の材料にされる。和名および学名は、魚類の発光の研究者の羽根田弥太(はねだやた)(1907―1995)に由来する。
ホタルジャコに似るが、ホタルジャコは肛門の位置が臀びれ起部と腹びれ起部の中間より前にあること、肛門が黒色を帯びないことなどで本種と区別できる。
[尼岡邦夫 2023年4月20日]