日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマトビウオ」の意味・わかりやすい解説
ハマトビウオ
はまとびうお / 浜飛魚
coast flyingfish
[学] Cypselurus pinnatibarbatus japonicus
硬骨魚綱ダツ目トビウオ科に属する海水魚。本種はカリフォルニア、チリ、ニュージーランド、インド洋および日本の5亜種に分けられる。本種を含むハマトビウオ属は日本から18種が知られ、本科中もっとも大きなグループである。北海道南部から沖縄までの太平洋に分布し、日本海や九州西岸では非常に少ない。伊豆、東京ではカクトビ、八丈(はちじょう)島ではハルトビ、宮崎ではコシナガという。全長55センチメートルぐらいになる大型種である。背びれ前方の正中線上の鱗(うろこ)が多くて40~47枚あること、胸びれは大きくて、第1軟条のみが不分枝であること、側線鱗(りん)が多くて61~68枚であることなどで、他のトビウオと区別できる。
太平洋南部の沿岸では12~1月に群で来て、産卵する。卵径は2ミリメートルほどで、半球の表面上に28~39本の付属糸があり、流れ藻や浮遊物に絡まる。体長34センチメートルの雌では1万6000粒ほどの卵をもつ。水温18℃のとき2週間で孵化(ふか)する。孵化仔魚(しぎょ)は全長5ミリメートル前後で、1か月で2センチメートルほどの稚魚になる。稚魚の下顎(かがく)に、縁辺が分枝した膜状のひげ状突起が出現する。
漁期は八丈島、伊豆大島では3~4月、薩南諸島では1~4月、高知県から鹿児島県では11~2月である。刺身、塩焼き、フライ、干物などにする。
[尼岡邦夫]