フライ(読み)ふらい(英語表記)Roger Eliot Fry

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フライ」の意味・わかりやすい解説

フライ(Christopher Fry)
ふらい
Christopher Fry
(1907―2005)

イギリス劇作家。港市ブリストルに生まれる。学生時代から詩や韻文劇を書き、卒業後、地方劇団に属して演技、演出から作詞、作曲まで受け持った。こういう職業的訓練が、少年時代のクェーカー的教育とともに、後の作品に影響を与えている。少数の習作を経て書いた喜劇『不死鳥はまたも』(1946)は、デビュー作として好評を博したばかりでなく、第二次世界大戦後の詩劇流行のきっかけをつくった。作品はほとんど詩劇形式の喜劇で、代表作の「季節喜劇」四部作は、『焚刑(ふんけい)をまぬかれた女』(1948)が春、『観測されたビーナス』(1950)が秋、『闇(やみ)も明るく』(1954)が冬、『太陽の庭』(1970)が夏というように、それぞれの季節の雰囲気で光景、性格を統一している点に特徴がある。イギリス詩劇に喜劇的要素を復活させ、1950年代に反既成演劇の爆発があるまで、戦後イギリス演劇の主流の座を静かに守り続けたのがフライであった。

[中野里皓史]

『D・スタンフォード著、小津次郎訳『クリストファ・フライ』(1956・研究社出版)』


フライ(料理)
ふらい
fry

洋風料理で、油脂で揚げたり、油焼きをすること。また、その料理の総称。油脂による熱処理の方法は大別して2種類あり、その一つはたくさんの油で揚げる方法(ディープフライdeep fry)である。他の一つは少量の油で炒(いた)め揚げる方法で、パンフライpan fry、ソテーsauterという。日本でフライというのは、小麦粉、溶き卵、パン粉をつけて揚げたものをいい、エビフライ、カキフライなどがその代表。素材が肉になると、チキンカツレツポークカツレツ(とんかつ)などとよばれる。

 フライに使う油脂には植物性と動物性があり、前者はサラダ油、大豆油、ごま油ショートニングなど、後者にはラード、バターなどがある。一般のフライの油の温度は160~180℃がよい。フライに添えるソースとしては、タルタルソース、トマトソース、ドミグラスソースなどが適する。

河野友美・小林文子・山口米子]


フライ(Roger Eliot Fry)
ふらい
Roger Eliot Fry
(1866―1934)

イギリスの美術批評家、画家。ロンドンに生まれ、同地に没。ケンブリッジ大学で自然科学を専攻したのち、美術の研究に転向。初めはイタリア・ルネサンスに深い関心を寄せ、ベッリーニジョットに関する著作を残した。1910年まで約4年間、ニューヨークメトロポリタン美術館キュレーターなどを勤める。10年と12年の二度にわたるロンドンのグラフトン画廊での展覧会でゴッホ、ゴーギャンセザンヌなど「後期印象派」の画家をイギリスに紹介したことは有名。11年以降、C・ベルらとともにブルームズベリー・グループの中心として活躍し、オメガ工房を主宰(1913~19)して陶器や織物など日用工芸品を制作。著書に『ビジョンとデザイン』(1920)、『セザンヌ』(1927)などがある。

[谷田博行]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フライ」の意味・わかりやすい解説

フライ
Fry, Edwin Maxwell

[生]1899.8.2. チェシャー,ウォラシー
[没]1987.9.3. ダラム,コザーストン
イギリスの近代建築家で国際様式の指導者。リバプール大学で C.レイリーのもとに学ぶ。 1934~36年,W.グロピウスに協力,ケンブリッジシャーのインピントン・ビレッジカレッジ (1936) を設計。 1945年以降,ナイジェリア,ガーナなどでの学校建築をはじめ,各種建築を設計。 1951~54年,ル・コルビュジエに協力し,インドのパンジャブ州の州都チャンディーガル建設に,主任建築家として従事した。主著に『乾燥地域と湿潤地域における熱帯建築』 Tropical Architecture in the Dry and Humid Zones (1964) がある。

フライ
Fry, Elizabeth

[生]1780.5.21. ノリッジ
[没]1845.10.12. ラムズゲート
イギリスの慈善家,ヨーロッパの刑務所改善の推進者。イギリスの病院制度や精神障害者の治療の改善にも尽力した。クェーカー教徒の富裕な銀行家の家に生まれた。1800年にロンドンの貿易商人ジョゼフ・フライと結婚。大家族の世話をするとともに,貧者に対する奉仕活動に従事し,1811年クェーカー教徒の「牧師」として認められた。スコットランド,北イングランド,アイルランドならびにヨーロッパ各国を旅行し,各地の刑務所を視察してその報告書をまとめた。ニューゲート刑務所に関する提案には,男女別の収容,量刑による分離,女性受刑者のための女性看守の配置,宗教的あるいは非宗教的な教育の実施,有益な労役などがあった。フライのさまざまな改善提案は,ヨーロッパでしだいに実行に移された。

フライ
Fry, Christopher

[生]1907.12.18. ブリストル
[没]2005.6.30. チチェスター
イギリスの劇作家。教師や俳優を経て,宗教的韻文劇を書いて作家活動に入った。機知に富んだ韻文喜劇『不死鳥はまたも』A Phoenix Too Frequent (1946) によって地位を確立。華麗な韻文劇を次々に発表して,第2次世界大戦後の詩劇復活運動の中心となった。代表作『焚刑を免れた女』 The Lady's Not for Burning (1948) ,『観測されたビーナス』 Venus Observed (1950) ,『闇は明るい』 The Dark is Light Enough (1954) 。『ベン・ハー』 (1959) その他の映画のシナリオも共同で執筆した。

フライ
Frey, Dagobert

[生]1883.4.23. ウィーン
[没]1962.5.13. シュツットガルト
オーストリアの美術史家。ウィーン工科大学で建築を,ウィーン大学で美術史を専攻。 1921年国立美術研究所所長,31~45年ブレスラウ大学教授,52年以後シュツットガルト大学教授。芸術史と精神史との結合を目指すウィーン学派の伝統に立って,比較芸術学の基礎づけに貢献した。主著『近代世界観の根底としてのゴシックとルネサンス』 Gotik und Renaissance als Grundlagen der modernen Weltanschauung (1929) ,『比較芸術学論』 Grundlegung zu einer vergleichenden Kunstwissenschaft (49) 。

フライ
Fry, Roger Eliot

[生]1866.12.14. ロンドン
[没]1934.9.9. ロンドン
イギリスの画家,美術評論家。大学で自然科学を学んだが,絵画制作に移り,1901年以後『アセーニアム』『バーリントン・マガジン』などで正統的芸術論を主張。 06年セザンヌに接して感動し,C.ベルらと後期印象派のイギリスへの紹介に努めた。 05年から 10年までニューヨークのメトロポリタン美術館館長をつとめ,33年ケンブリッジ大学教授。主著『視覚とデザイン』 Vision and Design (1920) ,『セザンヌ』 Cézanne (27) ,『美学の諸問題』 Some Questions in Aesthetics (34) 。

フライ
Frye, Herman Northrop

[生]1912.7.14. ケベック,シャーブルック
[没]1991.1.23. トロント
カナダの批評家。トロント,オックスフォード両大学に学び,トロント大学教授。文学の形態と範疇を追究し,神話を文学の構成原理とする立場から神話批評の確立に大きな貢献をした。主著『批評の解剖』 Anatomy of Criticism (1957) をはじめ,シェークスピアに関する『自然のだまし絵』A Natural Perspective (65) ,『時の道化役』 Fools of Time (67) のほか,『批評の道』 The Critical Path (71) ,『偉大な体系』 The Great Code (82) など多数の著書がある。

フライ
Frey, Adolf

[生]1855.2.18. アーラウ近郊キュッティゲン
[没]1920.2.12. チューリヒ
スイスの作家,文学史家。 1898~1910年チューリヒ大学教授。標準ドイツ語とスイス方言による抒情詩,親交のあった G.ケラーや C.F.マイアーの伝記,スイスの歴史を素材とする写実的な小説がある。

フライ
frit; fry

西洋料理の調理法の一つ。魚介類,肉類,野菜,卵などを衣なしで,あるいは各種の衣をつけて揚げる料理法。日本では多くの場合,魚介類に小麦粉,とき卵,パン粉の順に衣をつけて揚げたものをフライといっている。

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