改訂新版 世界大百科事典 「ハヤムウルク」の意味・わかりやすい解説
ハヤム・ウルク
Hayam Wuruk
生没年:1334-89
インドネシア,ジャワのマジャパイト朝最盛期の王(第4代)。在位1350-89年。本名はラージャサナガラであるが,〈若き雄鶏〉を意味する上記の通称で知られる。第3代の女王である母トリブワナーの死後王位を継ぎ,先代以来の名宰相ガジャ・マダの補佐を受けて国内を平定し,ジャワ以外にも領土ないし勢力範囲を拡大した。まず即位後まもなく西部ジャワのパジャジャラン王国を一時征服したが結局失敗し,ほかの地域に鋒先を転じた。当時の宮廷詩人プラパンチャは1365年に王の治世をたたえる年代記《ナーガラクルターガマ》を作り,現在のインドネシア共和国の大部分(西ジャワを除く)とマレー半島の南半分をマジャパイトの領土と称しているが,これは誇張であるとするのが現在の定説である。王の在位期間中は商業が繁栄し,文学や建築に多くの傑作が現れたが,宰相ガジャ・マダが1364年に死去し,王国は徐々に衰退した。
執筆者:永積 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報