日本大百科全書(ニッポニカ) 「バガウダエ」の意味・わかりやすい解説
バガウダエ
ばがうだえ
Bagaudae
ケルト語で「闘争者」「戦闘的なもの」を意味し、ローマ帝国末期にガリア、イスパニアで起こった民衆運動を総称する。その名は、283年、北ガリアの、原住民の共同体が残っていたアルモリカ地方で、ローマ支配下で没落させられていた農民や牧人が蜂起(ほうき)し、アマンダスとアエリアヌスを指導者として独立政権をつくり、自ら「バガウダエ」と名のったことに基づく。このとき、皇帝ディオクレティアヌスは、共同統治者マクシミアヌスを派遣して、4年後にようやく蜂起を鎮圧した。ドミナトゥス体制下の徴税強化のなかで、5世紀には運動が激化し持続的になった。407年のアルモリカ地方を中心とする独立政権の10年間の抵抗、435年のティバトを首領とする独立政権の成立など、運動は断続的に451年まで続いた。この運動には小農民、コロヌス、奴隷のほかに、南ガリアからも重税からの自由を求めて貧困化した民衆が参加した。動きは、さらにイスパニアのタラコネンシス地方にも広がった。ローマは、これらの運動を鎮圧するため、進入したゲルマン人に土地を与えて援助を求めたが、かえって属州での支配力を弱め、その没落を早めた。バガウダエの伝承は、北ガリアの農民の間で7世紀まで保持された。
[土井正興]
『土井正興著『古代史講座11 バガウダエ運動の基本的性格』(1965・学生社)』