改訂新版 世界大百科事典 「バッテル」の意味・わかりやすい解説
バッテル
Emmerich de Vattel
生没年:1714-67
スイス人の著名な国際法学者で,ドイツのザクセン侯に仕えた外交官。主著《国際法,すなわち,諸国および諸君主の行動および事務に適用された自然法の原則》(1758)はラテン語ではなくフランス語で書かれた国際法の現実的な体系書であり,広く一般に読まれるとともに,その後の国際法の発展にも大きな影響を与えた。また,同書がアメリカの独立(1776)の思想的根拠となったことはよく知られている。彼は啓蒙期自然法思想に立脚し,国家の自然的な自由・平等・独立を基礎とする近代的な国際法思想を展開した。国家の主権的平等,内政不干渉,中立の観念が強調され,また,戦争においては正戦・不正戦の区別が存在しないとするその後の無差別戦争観の端緒となった。
執筆者:尾崎 重義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報