改訂新版 世界大百科事典 「バナナセセリ」の意味・わかりやすい解説
バナナセセリ
Erionota torus
セセリチョウ科の昆虫。幼虫がバナナの害虫として知られるところからこの名がある。大型で開張6.5~7.5cm。翅の地色は暗褐色で前翅に数個の黄紋がある。このチョウは本来インド北部からアッサムを経てインドシナにかけての熱帯に分布しているものであるが,1971年に沖縄本島の沖縄市(旧コザ市)で発見され,以後75年ころまで大発生を続け,分布地域を拡大し,バナナにかなりの被害を与えた。その当時,やはりもともとすんでいなかったハワイおよびマリアナ諸島のサイパン島やグアム島でも大発生し,駆除対策が立てられた。このような突発的な大発生は,ベトナム戦争の際のアメリカ軍による兵員や軍需物資輸送に基づくものと考えられている。成虫は日没前後のたそがれ時によく活動し,花に集まり,ときに人家の電灯にも飛来する。幼虫はバナナの葉を筒状に巻いて巣をつくる。冬でも卵から成虫までの各段階が見られ,越冬態はきまっていない。
執筆者:高橋 真弓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報