改訂新版 世界大百科事典 「ババブーティ」の意味・わかりやすい解説
ババブーティ
Bhavabhūti
8世紀のサンスクリット劇作家。生没年不詳。中インドのパドマプラのバラモンの家に生まれ,ベーダの学に通じ,諸派の哲学にも通暁した。カニヤークブジャのヤショーバルマン王(在位730-740ころ)の宮廷詩人として王の庇護をうけた。3編の戯曲を残し,その名声はカーリダーサと並び称されている。彼の作品は荘重で高尚な趣を主とし,こっけい,機知の要素に乏しく,道化役の登場しないことも特徴である。代表作《マーラティーマーダバMālatīmādhava》は10幕から成り,パドマーバティー国の宰相の娘とビダルバ国の宰相の息子との恋愛がさまざまな波乱を生んで,二人がめでたく結婚する経緯を物語っている。《マハービーラチャリタMahāvīracarita》と《ウッタララーマチャリタUttararāmacarita》は大叙事詩《ラーマーヤナ》から取材した7幕の劇で,前者はラーマ王子と妃シーターの結婚から,魔王を退治して凱旋するまでの物語を主題とするが,第5幕以下は他の作者の作といわれる。後者はラーマが都に凱旋した後の後日物語である。
→カービヤ
執筆者:田中 於莵弥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報