アメリカの社会学者。カナダ生まれ。シカゴ大学で学位を取得し、同大学教授の地位にあった。シカゴ学派の代表的人物で、人間生態学や都市社会学の創設に寄与し、家族社会学の分野でも先駆的な業績を残した。R・E・パークとの共著『社会学の科学への序論』(1921)では、人間生態学や都市社会学の基礎となった、競争competition、闘争struggle、応化accommodation、同化assimilationの社会過程の概念を整理し、科学的な社会学の確立に貢献した。この著書の骨格はバージェスが準備したものといわれ、「社会学の聖書」とされるほどに読まれた。人間生態学を都市地域構造に適用・実証するために提示された同心円地帯理論theory of concentric circular zoneの仮説は、この種の研究に先鞭(せんべん)をつけ、都市社会学はもちろん地理学などの隣接科学にも大きな影響を及ぼした。この仮説は、都市は、競争の過程を通じて、中央ビジネス地区(CBD=Central Business District)を中心にこれを囲む遷移地帯、労働者独立住宅地帯、中流階級居住地帯、通勤者居住地帯の特徴的な地帯が同心円的に拡大していくというものである。H・J・ロックHarvey J. Locke(1900―2000)との共著『家族――制度から友愛へ』(1945)は長年にわたる家族研究の集大成ともいうべき業績であり、ここでは、アメリカの家族は古い村落的な制度型から新しい都市的な友愛型へ移行しつつあると主張した。アメリカ社会学会会長(1934)、全国家族関係協議会会長(1942)などの要職も歴任した。
[高橋勇悦]
『R・E・パーク、E・W・バーゼス著、大道安次郎・倉田和四生訳『都市――人間生態学とコミュニティ論』(1972・鹿島研究所出版会)』▽『E・W・バージェス編、森幹郎訳『西欧諸国における老人問題』(1975・社会保険出版社)』
イギリスの小説家。本名はJohn Anthony Burgess Wilson。マンチェスターのカトリックの家に生まれる。初め音楽家を志すが、同地の大学の英文科を卒業後、軍務に服し、第二次世界大戦後マラヤ(マレー)、ボルネオなどの植民地の教師を歴任。1956年、『マラヤ三部作』の第一部『虎(とら)のための時』で文壇に登場。以来最終長編であるクリストファー・マーロウを主人公にした『デトフォードの死者』(1993)に至る37年間に少なくとも30数編の長編小説、12編の批評、言語学入門書を出している。古語、廃語、卑語に生命力をよみがえらせて、これを馴致(じゅんち)しながら意表をついた設定の作品をつくる彼は、ラブレー、ジョイスの正統の後継者であり、しかも現代イギリスでもっとも多産な作家であった。
代表作に、英語とロシア語からつくった合成語で書いた『時計じかけのオレンジ』(1962)、滑稽(こっけい)で哀れな現代のブルームを主人公にした『エンダビー氏の内側』(1963)、『外なるエンダビー』(1968)、構造主義・文化人類学の枠組みを利用した『MF』(1971)、80歳の死の床に横たわった作家の末期(まつご)の眼(め)を通して見た波瀾(はらん)の現代史を含み込んだ『地上の力』(1980)、三つのテレビの同時進行による終末譚(たん)『世界の終りのニュース』(1982)、死後出版の遺作として韻文体長編小説『バーン』(1995)などがある。93年11月22日没。
[出淵 博]
『『アントニイ・バージェス選集』全九巻(1978~ ・早川書房)』
アメリカの社会学者。R.E.パークと並びシカゴ学派の人間生態学・都市社会学を指導するとともに,家族の分野にも優れた業績を残している。人間生態学,都市社会学の分野においては,パークとの共著《社会学なる科学序説Introduction to the Science of Sociology》(1921)など基本的見地の確立にも寄与しているが,彼のおもな貢献はむしろ都市地域構造に関する同心円説concentric-zone theoryを通じて,シカゴ学派の実証研究を指導した点にある。彼によると,都市地域は都市の発展につれて中央商業地域を中心とし外周を郊外高級住宅地帯とする五つの同心円的構造をなして膨張していく。同心円説については多くの批判がなされているが,マウラー,ショーらは同心円地帯と家族類型,社会解体など社会現象が対応していることを明らかにし,これを支持している。他方,家族についてバージェスはH.J.ロックと共著の《家族The Family》(1945)において,現代のアメリカ家族が古い村落的な制度的形態から都市の生活様式に適応した民主的,友愛型の家族へと移行しつつあることを説いた。
執筆者:倉沢 進
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…その外側に上野,浅草,池袋,新宿,渋谷,五反田などの副都心がみられる。 都市内部の機能地域の分化について,E.W.バージェスの同心円構造仮説が1925年に提出され,その変形の扇形理論が33年にホイトH.Hoytによって示されている(図)。バージェスの同心円構造の仮説は,都市社会が同心円状に拡大し,住み分けているというものであるが,都心地区と住宅地区との間に漸移地帯zone in transitionの存在を考え,そこに軽工業と移民集落(多くは貧民窟地区slum area)と都心機能のあふれ出しとの混在を指摘した。…
…都市生活の実態をふまえて,都市,都市の地域・地区,都市圏の現状,動態,変貌を解明しようとする特殊社会学の一分野。都市社会学の研究は,1920年代にアメリカで当初は人間生態学の観点から行われ,C.ブースの《ロンドン民衆の生活と労働》(全17巻,1902‐03),トマスWilliam I.Thomas(1863‐1947)とF.W.ズナニエツキーの共著《ヨーロッパおよびアメリカにおけるポーランド農民》(1918‐20),シカゴ学派のR.E.パーク,E.W.バージェス,R.D.マッケンジーによる共著《都市》(1925)が注目される。都市研究の観点と方向とを理論的に明らかにした《都市》は,その後の都市社会学研究の出発点となった。…
※「バージェス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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