日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマースト大学」の意味・わかりやすい解説
アマースト大学
あまーすとだいがく
Amherst College
アメリカ合衆国マサチューセッツ州西部の小都市アマーストにある私立のリベラル・アーツ・カレッジLiberal Arts College。名称は所在地名による。リベラル・アーツ・カレッジとは、大学形態の一種で、合衆国においてもっとも伝統的な大学形態である。そのほとんどが私立大学であり、小規模で全寮制をとることで知られる。基本的に大学院をもたず、学士課程において、文理にわたる幅広い教養教育を少人数指導のもとで学ぶことを通じて、思考力や判断力の育成を目ざす点に特色がある。学生は人文科学、社会科学、自然科学の三つの領域にわたってさまざまな科目を幅広く履修するとともに、主としてリベラル・アーツ分野(専門職的あるいは技能的職業教育ではない学問的分野)を専攻する。アマースト大学は全米のリベラル・アーツ・カレッジのなかでもトップレベルにあり、入学選抜の難易度がきわめて高い。
マサチューセッツ州では三番目に古い大学で、1821年創立。地域住民の協力のもと、貧しくとも聖職者にふさわしい敬虔で才能ある若者のために、無宗派の高等教育機関を創設することを目的として設立された。アメリカの辞典編纂者として著名なウェブスターNoah Websterは創立者の1人であり、アマースト・アカデミーの理事長として当時資金集めに大きく貢献した。こうした流れを受けて、創設以来、志願者の学費支払い能力とはかかわりなく成績のみで合否判定する伝統を維持してきた。キャンパスには、赤レンガに代表される19世紀の建築様式を残し、周囲には豊かな田園風景が広がる。
2007年現在、学生数1648名、専任教員数177名。教員対学生比率は1対8の割合となっている。小規模な教育環境において、教員と学生との交流は非常に密であり、質の高い教育が行われることで有名である。その功績は、ノーベル賞、ピューリッツァー賞受賞者の輩出にも表れている。「探求の自由」を重んじ、学生の興味関心、目的意識に応じて、伝統的な学問分野と多数の学際的な分野から幅広い自由な選択履修を可能とするカリキュラムに特色をもつ。提供される科目数は、33の専攻にまたがって800以上の科目にのぼる。
女子の入学を認めたのは1975年になってからのことだが、現在、女子学生は約半数を数える。学生の出身もアメリカ全土にわたり、世界40か国以上から学生を受け入れることによって、近年では学生の多様性を重視している。日本とも関わりが深く、新島襄(にいじまじょう)や内村鑑三(うちむらかんぞう)らが卒業している。
同じくマサチューセッツ州内にある近隣のスミス大学Smith College、マウント・ホリオーク大学Mount Holyoke College、ハンプシャー大学Hampshire College、マサチューセッツ大学アマースト校University of Massachusetts-Amherstと提携し、「5大学コンソーシアムthe Five College Consortium」を形成。単位互換制度や施設の相互利用によって、教育内容にさらなる多様性と深みを与えている。
[杉谷祐美子]