出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…そもそもヨーロッパ列強がみずからの植民地主義を正当化するためには,それなりのもっともらしい論理が必要であった。たとえば適者生存の生物学的論理を応用した社会ダーウィニズムSocial Darwinismや白人優越主義の論理などが,必要に応じて唱えられた。さらにそこから発展して,〈未開野蕃〉で〈自己発展の能力に欠ける〉アフリカ人およびアフリカ社会を教化し,文明開化させることは先進的なヨーロッパ諸国の責務であるといった,一方的な使命感が生み出された。…
…1869年以降雑誌《クラージKraj(国家)》などの編集に携り,75年グラーツ大学の行政学講師となり(83年員外教授,92年教授),癌のため妻と自殺するまで在任した。彼はダーウィンの生存競争説やスペンサーの社会進化論の強い影響のもとに,社会は集団間の対立,闘争を通して,強者が弱者を征服し,支配する形で発展するという〈社会ダーウィニズム〉の歴史観をとった。この集団間闘争は,当初は外部的集団間の闘争であるが,その結果,武力支配と制度化によって国家が成立し,階級分化が生じ,しだいに闘争は内部化され,果てのない階級闘争が続けられるとした。…
…今日,社会進化論は,社会はしだいに進化し進歩するという社会理論一般を指し,C.ダーウィンの進化論を直接社会現象の説明に適用するいわゆる社会ダーウィニズムsocial Darwinismとは別物であるとする暗黙の了解がある。しかし歴史的にみると,比較的最近になるまで両者の区別は存在しなかった。…
… しかし,すべての動物の社会行動が進化的に安定な戦略といえるかどうかには疑問もある。また,ウィルソンが人間社会に見られる性差別,人種差別,戦争,浮気なども動物社会との比較類推から説明しようとしたことに対しては,人間社会の悪を合理化する新しい〈社会ダーウィニズム〉だという批判もある。 なお,ウィルソン自身は社会生物学を〈各種生物の社会行動の生物学的研究〉と定義したが,一般には社会生物学という言葉は上記のような狭義で用いられている。…
…彼にとって帝国形成のための対外膨張とは,中核民族に経済的・政治的・軍事的利益をもたらす空間の獲得という意味ばかりでなく,異人種を排除した浄化された空間を構築することをも意味し,深く人種主義と結びついていた。 ヒトラーの国際政治に対する考え方は,社会ダーウィニズムに強く影響されていた。〈政治こそが生存競争の指導者であり,それが有効か否かが民族の生と死の境を決定するのである〉と。…
…進化研究のこの歩みは同時に生物学の諸分野の遺伝学を中心においた総合でもあるので,その道を進む研究者たちは総合学派と呼ばれ,その基本的な学問傾向はネオ・メンデリズムneo‐Mendelismと称されることもあるが,ネオ・ダーウィニズムと結局は同義になる。なお自然淘汰ないし生存競争の観念を社会の問題に適用した考えかたは社会ダーウィニズムと呼ばれる。社会進化論【八杉 龍一】。…
…ヒトラーは,生物の〈自己保存衝動〉をもっとも根源的な欲求ととらえ,この衝動にもとづく闘い,強者による弱者の支配・駆逐を〈自然〉の摂理として肯定し,この論理を人間界の個人と人種の双方に適用した。このような社会ダーウィニズムの世界観から,個人・民族間の平等,民主主義,議会主義,人道主義,国際平和を否認し,卓越した個人による独裁的統治,反ユダヤ主義を唱え,また人種の〈自己保存衝動〉を充足する基盤として〈生存圏〉の樹立を主張した。ヒトラーは,友人との親密な交際,家庭生活での団欒の体験を欠き,個人生活の内容は貧弱であったが,自己の目標達成のための緻密な策略と聴衆を酔わせる演説の才能をもちあわせていた。…
…しかし,人間の形質のうちでメンデルの遺伝法則に従うことが明らかになっているのは,血液型を除いてはほとんどが病的形質であるため,優生学の名のもとに実行されたことのほとんどは〈消極的〉優生学であった。 優生学は,19世紀末から20世紀初頭にかけて大いに流行した社会ダーウィニズムの一典型であり,子孫の数と質に注目する点で,最もダーウィン思想に忠実な一分派であった。ゴールトンの思想は,イギリス本国でよりはアメリカ社会で広く受け入れられた。…
※「社会ダーウィニズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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