翻訳|Robin Hood
イギリスの伝説的英雄。〈獅子心王〉リチャード1世(在位1189-99)の時代,すなわち12世紀後半ごろに,ノッティンガムシャーのシャーウッドの森にこもり活躍したと伝えられる。リトル・ジョン,タック坊さんなど,愉快な部下とともに悪王の圧政に苦しむ民衆を助け,金持ちから奪った富を貧民に与え,けっして女に害を加えぬ義賊といわれる。一説によると,本名をハンティンドン伯爵ロバート・フィツースEarl of Huntingdon,Robert Fitz-Oothという貴族であったが,ゆえあって国法を破り森に住む山賊となり,最後に一修道女の裏切りによって非業の死をとげたことになっている。ロビン・フッドは民衆の間に圧倒的な人気があったため,数々の文献に名を残している。長編詩《農夫ピアーズの夢》(1360年代から90年代)の中にすでにその名が現れるし,15世紀の多くのバラッドに歌われている。15世紀ごろからイギリス民衆の間に流行した舞踊〈モリス・ダンス〉では,踊り手がロビン・フッドや部下に扮する習慣があり,とくに〈メーデー〉(五月祭,5月1日)は〈ロビン・フッドの日〉と呼ばれ,祝祭行事の一つとして彼に扮して踊って芝居をする。16世紀には彼を主人公とする多くの戯曲が,例えばマンデーAnthony Munday(1553?-1633)などによって書かれた。19世紀のウォルター・スコットの代表作《アイバンホー》(1820)でも,リチャード1世を助ける正義の士としてロビン・フッドが登場する。現在でも映画やアニメ,絵本や漫画で活躍している。
執筆者:小池 滋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イギリスの伝説的英雄。実在の人物か、中世のバラッドがつくった人物か、出自については諸説がある。12世紀ごろシャーウッドの森にリトル・ジョンやタック修道士らの仲間と住み着き、悪代官や横暴なノルマン貴族、僧侶(そうりょ)から金品を奪い、貧者に分け与えたと伝えられる。みごとな長弓の腕前や、貧者に施す義賊ぶり、牧歌的な森の生活が共感をよび、イギリスでもっとも人気のある民衆的英雄。15、16世紀には恋人のメイド・マリアンとともに、五月祭の立役者にもなった。バラッドや劇、小説、童話、映画などで、その勇壮な冒険が繰り返し扱われている。ロビンを貴族化したアントニー・マンディの劇『ハンティントン伯爵ロバートの没落』と『ロバートの死』(ともに1598)や、W・スコットの『アイバンホー』、デュマの小説、ハワード・パイルの童話(1883)などが有名。
[上野美子]
『小倉多加志訳注『ロビン・フッドの冒険』(1972・南雲堂)』▽『H・パイル著、村山知義訳『ロビン・フッドの愉快な冒険』(岩波少年文庫)』▽『上野美子著『ロビンフッド伝説』(1988・研究社出版)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
イングランドの義賊,伝説的英雄。ノッティンガムシャー,シャーウッドの森にこもり,部下とともに,領主や修道院長から財物を奪い,貧民に与えたとされる。13世紀末以降俗謡で歌われ,物語が形づくられた。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…おおむね6人のほかに道化や,ホビー・ホースと呼ばれる馬に扮した人物が加わる。踊手は伝説上の人物に扮することが多く,ロビン・フッド,その恋人メアリアン,修道僧タックなど,ロビン・フッド物語の人物が最も一般的だが,顔を黒く塗ってムーア人になることもある。五月祭のころに行われることが多いので,新しい季節の到来や生命の復活を祝う,祭式的な意味をもっていたと考えられる。…
※「ロビンフッド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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