精油をとる原料植物として東南アジアやインドで主に栽培されているシソ科の多年草。茎は高さ30~80cm,下の方から分枝する。葉は広楕円形で,波状で不ぞろいの重鋸歯があり,長さ8~10cm,裏面には細毛がある。花穂は枝の先につき長さ5~15cm,密に苞葉が並び,その間より淡紫色で2唇形の花をつけるが,普通に栽培しているものは刈取りをするためか,ほとんど花をつけない。熱帯のやや湿った地に適し,繁殖はもっぱら挿木によって行われる。挿木をして6~7ヵ月で第1回目の刈取り適期となる。その後年に1~2回刈取りを行って,3~4年目に新しく植替えをするのがよいといわれている。多くは葉を4~5日干したものを蒸留して強い芳香のある精油をとる。インドあたりでは衣服や枕などの香りつけや,また風呂に入れて薬湯とする。消化器官系の病気やぜんそくを治すのに用いられ,解熱,鎮痛の作用があるといわれる。生の葉から蒸留した精油はパチョリアルコール,オイゲノール,ベンズアルデヒド,カジネンなどを含む。
執筆者:村田 源
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
シソ科(APG分類:シソ科)の多年草。草丈は1メートルほどで、低木状になる。葉は対生し、卵形で縁(へり)にぎざぎざがあり、長さ約10センチメートル、細毛が密生する。フィリピン原産で、葉から精油をとり、古くから香水原料として珍重され、フィリピン、スマトラ、マダガスカル、ブラジルなど熱帯各地で広く栽培されている。一般の栽培条件では花がつかないので、繁殖はもっぱら挿木による。苗を畑に植え付け、半年ほどしたら茎葉を収穫する。1年に2、3回刈り取り、3~4年間続けて収穫できる。株が古くなると、葉の精油含量が減るので植え直す。収穫した葉はいったん日に干してから蒸留して香油patchouli oilをとる。主成分は竜脳(りゅうのう)に似たパチョリアルコールpatchouli alcoholやカジネンcadineneなどである。香油は香水やヘアトニック、せっけん、たばこなどの香りづけに用いられる。衣服や枕(まくら)、ショール、カーペットなどの香りづけにも使われるが、これはイガ(衣蛾)の駆除にもなる。また、薬用にも使われる。
[星川清親 2021年9月17日]
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