日本大百科全書(ニッポニカ) 「パノーワ」の意味・わかりやすい解説
パノーワ
ぱのーわ
Вера Фёдоровна Панова/Vera Fyodorovna Panova
(1905―1973)
ソ連の女流作家。ロストフ・ナ・ドヌーに生まれる。17歳から20余年間マスコミ関係で働きながら文学修業に励む。1944年、従軍記者として前線から傷病兵を後方へ護送する病院列車に乗り込み、その体験を中編『道づれ』(1946)に結実させ、一躍有名作家となる。続いて長編『クルジリーハ』(1947)、中編『明るい岸』(1949)を発表、連続してスターリン賞を受賞。しかし『明るい岸』が「無葛藤(むかっとう)理論」の影響で現実を美化したとすれば、次の長編『四季』(1953)はソ連社会の暗黒面を鋭くえぐり、エレンブルグの『雪どけ』とともに、読書界と論壇に大論争を呼び起こした。その後は少年の魂の成長を描いた佳編『セリョージャ』(1955)、自伝的色彩の強い『感傷的な物語』(1958)を書き、晩年には歴史小説、戯曲、映画シナリオの筆をとった。
[箕浦達二]
『井上満訳『道づれ』(1955・岩波書店)』▽『工藤精一郎訳『四季』(1956・講談社)』▽『金光せつ訳『大好きなパパ』(1984・理論社)』