四季(読み)しき

精選版 日本国語大辞典 「四季」の意味・読み・例文・類語

し‐き【四季】

[1] 〘名〙
① 春・夏・秋・冬の四つの季節。四時。〔令義解(833)〕
※源氏(1001‐14頃)若菜下「調べ殊なる手二つ三つ、おもしろき大曲(ごく)どもの、四季につけて変るべきひびき、空の寒さぬるさを調(ととの)へいでて」 〔風俗通‐皇覇〕
② 各季節の末の月。すなわち、陰暦で、三・六・九・一二月をさす。季春・季夏・季秋・季冬の総称。また、各々の土用。
※応仁記(15C後)一「鹿苑院殿御代に倉四季にかかり、普広院殿の御代に成、一年に十二度かかりける」
※浮世草子・西鶴織留(1694)六「きう銀八拾目四季(キ)着て上下の帯ふところ紙手足の入用まで算用するに」
[2]
[一] 詩雑誌。第一次は、昭和八年(一九三三)五月、七月刊。全二冊。堀辰雄編集の季刊誌。第二次は、月刊。同九年一〇月から同一九年六月まで発刊。全八一冊。三好達治・丸山薫・堀辰雄編集。萩原朔太郎室生犀星・中原中也ら当時の抒情詩の代表的詩人が参加執筆し、抒情の純粋性を追求した。戦後、第三次、第四次が刊行された。
[二] (原題Il quattro stagioni) 協奏曲。ビバルディ作曲。作品八。一七二五年刊。独奏バイオリン弦楽合奏のための「和声法インベンションの試み」一二曲中の、春夏秋冬の題名のついた最初の四曲。
[三] (原題Die Jahreszeiten) オラトリオハイドン作曲。一八〇一年初演。スコットランドの詩人ジェームズ=トムソンの詩のドイツ訳によって作曲。春夏秋冬の四部三九曲からなる。

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デジタル大辞泉 「四季」の意味・読み・例文・類語

しき【四季】[書名・曲名]

詩雑誌。昭和8年(1933)堀辰雄が創刊。第二次は翌昭和9年(1934)から三好達治丸山薫・堀辰雄編集の月刊で昭和19年(1944)まで発刊。萩原朔太郎室生犀星むろうさいせい中原中也などの叙情詩の代表的詩人が参加。第五次まで断続して刊行された。
《原題、〈イタリアLe quattro stagioniビバルディ作曲の、独奏バイオリンと弦楽合奏のための12曲からなる協奏曲集「和声と創意への試み」の中の、春・夏・秋・冬の名のついた第1番から第4番の通称。作曲年代未詳。
《原題、〈ドイツ〉Die Jahreszeitenハイドン作曲のオラトリオ。1801年ウィーンで初演。英国の詩人トムソンの作品に基づく。
滝廉太郎作曲の歌曲集。明治33年(1900)発表。武島羽衣作詞の「」、東くめ作詞の「納涼」、滝廉太郎作詞の「月」、中村秋香作詞の「雪」の4曲からなる。第1曲「花」は、春の隅田川の情景を描写した合唱曲として広く親しまれ、平成19年(2007)、文化庁と日本PTA全国協議会による「日本の歌百選」に選定された。
中村真一郎の4部作の連作長編小説、およびその第1作。昭和50年(1975)刊行。人の一生を四季にたとえ、本作が描く青春時代を春として、続く作品「」「」「」で同じ主人公の変化を描いた。
《原題、〈イタリア〉Le quattro stagioniアルチンボルドの絵画「」「」「」「」の総称。さまざまな自然物で構成した寄せ絵の連作であり、神聖ローマ皇帝マクシミリアン2世に献呈された。

し‐き【四季】

の四つの季節。四時。「四季折々の花」
各季節の末の月。すなわち、陰暦で、3月・6月・9月・12月。季春・季夏・季秋・季冬の称。
[補説]気象庁天気予報等では、3月~5月を春、6月~8月を夏、9月~11月を秋、12月~2月を冬としている。
作品名別項。→四季
[類語]季節時季時節時候四時しじ春夏秋冬折節おりふしシーズン

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改訂新版 世界大百科事典 「四季」の意味・わかりやすい解説

四季 (しき)

詩誌。第1次は堀辰雄編集,四季社刊,1933年5~7月,全2冊の季刊誌。第2次は堀辰雄,三好達治,丸山薫の共同編集で出発,四季社刊,34年10月~44年6月,全81冊の月刊誌。とくに注目されるのは第2次《四季》で,共同編集者のほか,津村信夫と立原道造が参加して昭和10年代抒情詩の一方向を定めた。のち萩原朔太郎,室生犀星のほか,中原中也,竹中郁神保光太郎伊東静雄などの詩人,あるいは桑原武夫,河盛好蔵,大山定一保田与重郎芳賀檀なども参加して総合文化誌的側面もあった。そのおおよその性格は,《詩と詩論》など昭和初頭の実験的モダニズムの後を受けて,調和的な知性によって抒情性をとらえ直し,よく伝統的詩情を守ったというあたりにある。同人のなかには《日本浪曼派》《コギト》にも属して,戦争期の時代精神に激しくゆさぶられた者もあったが,堀に代表される近代知性はその温雅な主情性を貫き通した。戦後,第3次・第4次《四季》が刊行された。
執筆者:

四季 (しき)

春夏秋冬の四つの季節を題材とした音楽作品。古くから数多く作曲されてきたが,とくに有名なのは,以下の作品である。(1)ビバルディのバイオリン協奏曲集《四季Il quatro stagioni》(《和声と創意の試み》(作品8,1725)の冒頭4曲)。

 イタリアのベネト地方の田園生活の四季を歌いあげたソネットが付随する。(2)ハイドンの晩年のオラトリオ《四季Die Jahreszeiten》(1801) 台詞はスコットランドの詩人J.トムソンの原作をG.B.vanスウィーテン男爵がドイツ語に編作したもの。小作人シモン,娘ハンネ,若い農夫ルーカスを主人公に,合唱,管弦楽を駆使して,季節によって推移する田園の牧歌的情景と大地に根ざした生活の営みを歌い上げる。(3)ロシアの近代音楽家グラズノフによるバレエ音楽《四季》(作品67,1900)。
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四季 (しき)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「四季」の意味・わかりやすい解説

四季
しき

詩誌。 (1) 第1次 季刊。堀辰雄編集。 1933年5月に第1冊,同年7月に第2冊を刊行して中絶。堀,室生犀星,佐藤春夫,神西清,小林秀雄,横光利一,中原中也,丸山薫,三好達治らが執筆。 (2) 第2次 月刊。堀辰雄を代表とし,丸山薫,三好達治が共同編集。 34年 10月~44年6月。通巻 81巻。ヨーロッパ詩の正しい理解のもとに日本詩の正統を守るという基本態度を貫き,萩原朔太郎の随筆をはじめ,三好,丸山,中原中也,立原道造,津村信夫,伊東静雄,田中冬二,神保光太郎らが活躍して第2次世界大戦前における抒情派最大の拠点となった。リルケの影響が強く,イデオロギーに偏しなかった点にも特徴がある。 (3) 第3次 堀辰雄編集。角川書店発行。戦後新文学の創造という堀の熱意によって 46年8月に創刊されたが,堀の病気のため,4号から神西清が編集を受継いだ。 47年 12月の5号で終刊。1次から3次まで終始堀が中心となり萩原朔太郎の影響による音楽的抒情性の濃い「四季派」を形成,「歴程派」と並んで最大の詩人群を育成した。

四季
しき
four seasons

一年の四つの季節,春夏秋冬のこと。北半球と南半球では出現期が逆になる。自転軸が地球の公転面(黄道面)に対して垂直ではなく,約 23.4°傾いていることによって生じる。温帯で明瞭にみられるが,高緯度や低緯度でははっきりと区別しにくい。日本や中国などの暦では立春,立夏,立秋,立冬が,欧米では春分,夏至,秋分,冬至が季節の始めになる。気候学的には,中緯度では一般に 12~2月を冬,3~5月を春,6~8月を夏,9~11月を秋とする。一方,低緯度の熱帯地方の季節は雨季と乾季の 2季であり,夏季モンスーンの卓越するインドでは,12~2(3)月を冬,3(4)~5月をプレ・モンスーン,6~9月をモンスーン(雨季),10~11月をポスト・モンスーンとしている。

四季
しき
The Seasons

イギリスの詩人 J.トムソンの長詩。4巻。「冬」 (1726) ,「夏」 (27) ,「春」 (28) ,「秋」 (30) の順序で出版され,最後の巻には自然への「賛歌」が加えられた。各巻ともその季節の風物を綿密に描き,感懐を述べ,それに種々の挿話を配している。自然への愛や無韻詩を用いたことなど,ロマン主義の先駆と考えられる。

四季
しき

四季を描いた楽曲名。この名をもつ作品では次のものが有名。 (1) ビバルディ作曲のバイオリンと管弦楽のための協奏曲『和声とインベンションの試み』 op.8の第1から第4までの4曲。 (2) ハイドン作曲のオラトリオ。 (3) チャイコフスキー作曲のピアノ曲 op.37b。 (4) グラズノフ作曲のバレエ組曲。

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デジタル大辞泉プラス 「四季」の解説

四季〔バレエ〕

①フランス出身の舞踊家・振付家マリウス・プティパによるバレエ(1900)。原題《Les Saisons》。サンクト・ペテルブルクのエルミタージュ劇場で初演。
②ロシアの作曲家アレクサンドル・グラズノフのバレエ音楽(1900)。原題《Les Saisons》。①で使用された。

四季〔ヴィヴァルディ〕

イタリアの作曲家アントニオ・ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集『和声と創意の試み』の第1番から第4番までの通称。原題《Le quattro stagioni》。第1番から順に春、夏、秋、冬と名付けられている。バロック音楽の中で最も有名な作品の一つ。

四季〔ハイドン〕

オーストリアの作曲家ヨーゼフ・ハイドンのオラトリオ(1799-1801)。原題《Die Jahreszeiten》。農民たちが春夏秋冬の恵みについて、神に感謝と祈りを捧げる歌を歌っている。

四季〔チャイコフスキー〕

ロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキーのピアノ曲集(1875, 76)。全12曲。ロシアの一年の風物を元に、各月ごとに描写している。

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音楽用語ダス 「四季」の解説

四季

四季は、ヴィヴァルディによって作られた4つのバイオリン協奏曲。各協奏曲には、秋、冬、春、夏という名前がつけられている。それぞれの四季に象徴的な、鳥の声、嵐、氷などが、生き生きと描写されている。

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百科事典マイペディア 「四季」の意味・わかりやすい解説

四季【しき】

季節

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