1980年に登録されたシリアの世界遺産(文化遺産)。首都ダマスカスの北東約230km、シリア砂漠の中央にあるローマ帝国の属州時代の都市遺跡。「パルミラ」はここを支配したギリシア人が名づけたもので、古名は現在のアラブ名と同じ「タドモル」だった。この地域はローマ帝国領だった紀元前1~後3世紀までは、シルクロードの隊商都市として発展した都市国家だったが、3世紀半ば、ローマ帝国の混乱に乗じて、パルミラ王国が建国された。しかしローマからの分離・独立を図ったゼノビア女王は、ローマ軍の捕虜になり王国は滅亡、都市は廃墟となった。その後は、東ローマ(ビザンチン)帝国やイスラム帝国の要塞として使われ、今日に至る。遺跡はローマ帝国時代のものがほとんどで、凱旋門、列柱付き大通り、コリント式の円柱に囲まれたベル神殿、半円形のローマ劇場、公共浴場、墓地の谷などがあるが、2011年以降に内戦状態になったシリアで治安の悪化が進み、少なくとも4基の墓の彫像や石棺などの盗掘が確認され、2013年に危機遺産リストに記載された。◇英名はSite of Palmyra