パルミラ(読み)ぱるみら(英語表記)Palmira

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パルミラ」の意味・わかりやすい解説

パルミラ
Palmyra

シリア中部にあるオアシスを中心とした村。ダマスカスの北東約 210km,シリア砂漠北端に位置する。タドモル Tadmorとも呼ばれる。古代には隊商都市として知られ,住民はアラブ人を中心としたが,言語はアラム語であった。ソロモンが建設したとも伝えられるが,証拠はない。すでに前19世紀の楔形文字史料に現れる。前3世紀,セレウコス朝時代に興隆の兆しが現れ始め,前1世紀シリアとバビロニアを結ぶ貿易の中継都市として急速に発展した。106年ローマ帝国の支配下に置かれたが,自治を許され,商業活動はいっそう盛んになり,オリエント(→中東)最大の隊商交易の拠点となった。3世紀後半にローマとササン朝ペルシアの対立に乗じて,オデナトゥスとその一族が実権を握り,その妻ゼノビアが独立を宣言,小アジアからエジプトにまたがる隊商帝国を形成するにいたった。そのため 272年ローマのアウレリアヌス帝により滅ぼされた。以後衰退の一途をたどり,アラブに略奪され廃墟と化した。なお,パルミラ人の宗教の発展は重要で,2世紀には「知られざる神」の一神教が行なわれた。今日ではナツメヤシオリーブ果樹園に取り巻かれた村で,イラクキルクーク油田からレバノントリポリへ向かうパイプラインが通っている。ローマ時代の遺跡(→パルミラ遺跡)は今日も残存し,その博物館もある。人口 2万627(1985推計)。

パルミラ
Palmira

コロンビア西部,バイェデルカウカ州南東部の都市。州都カリ東北東約 30km,アンデス山中の肥沃なカウカ谷にあり,標高約 1000m。 1688年建設。古くから農牧業の中心地として発展,現在カリに次ぐ同州第2の都市。タバココーヒーサトウキビ,イネ,トウモロコシなどの栽培と牧牛が盛んで,「コロンビアの農業首都」といわれ,市内には農事試験場,農業大学などがある。保養地としても知られる。カリその他のカウカ谷の諸都市と鉄道,道路で連絡。人口 18万 5224 (1985) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パルミラ」の意味・わかりやすい解説

パルミラ(シリア)
ぱるみら
Palmyra

シリア砂漠の中央にあるオアシス都市。現在シリアに属し、タドモルとよばれる。イスラエル王ソロモンは東方物資輸入の前線基地とした。紀元前1世紀ごろからシルク・ロード上の中継交易都市となり、ローマ帝国とパルティア帝国、続くササン朝ペルシア帝国との抗争に際してはローマ側の傘下に入って急速に発展した。3世紀後半に登場した女王ゼノビアはローマ帝国に独立を宣言したが、アウレリアヌス帝に攻略された。都市構造、政治形態、宗教、言語、美術を含む文化全般に、ギリシア、ローマ、ペルシア、エジプトなど東西文明の影響がみられる一方、シリアの伝統を継承するパルミラ独特の性格が認められる。遺跡の墓室から漢代の中国製絹織物が出土している。なお、パルミラの遺跡は1980年に世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)として登録されたが、内戦により甚大な被害を受けたとして、2013年には危機遺産リスト入りしている。

[小玉新次郎]

『小玉新次郎著『パルミラ』(1980・近藤出版社)』



パルミラ(コロンビア)
ぱるみら
Palmira

南アメリカ北西部、コロンビア中西部、カウカ川中流域にある都市。人口27万1681(1999)、31万2507(2019推計)。カリ市の北東30キロメートル、アンデス山脈中の標高915メートルに位置する。インター・アメリカン・ハイウェーに沿い、タバコ、コーヒー、砂糖、米、大豆などが集散される。熱帯農業大学がある。市内をタクシーと並んで馬車が旅客交通に利用されていることで知られる。郊外に日系人の集団移住地があり、野菜、果物を生産している。

[山本正三]

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