改訂新版 世界大百科事典 「ヒオドシエビ」の意味・わかりやすい解説
ヒオドシエビ
Acanthephyra purpurea
十脚目ヒオドシエビ科の甲殻類。深海遊泳性のエビで,体長12cmに達する。潜在的な水産資源として有望とされているが,現在は未開発である。太平洋,インド洋,大西洋に共通する種で,日本近海にも多い。生きているときは一様に濃い赤色。これが緋縅(ひおどし)の色のようだというのでこの名がある。水深200~5000mからの採集記録があり,日周期性の深浅移動をするものと推定される。日中は多くは900~1800mで採集されるが,夜間は一般にそれよりも浅い層へ移動する。また,稚エビはやや上層にすむらしく,水深900~1300mに濃密に分布している。頭胸甲は滑らかで,あまり硬くなく,強く側扁している。とげは鰓前棘(さいぜんきよく)のみ。額角(がつかく)は頭胸甲とほぼ等長で,水平に突出し,上縁に9~13本,下縁に4~5本のとげがある。腹部の第3~5節の背面後端はそれぞれ小さなとげに終わる。尾節には5対のとげが側縁に並んでいる。第1,2胸脚ははさみをもち,各胸脚に発光器がある。近縁のトゲヒオドシエビA.eximiaでは第3腹節の背面後端のとげが著しく大きい。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報