改訂新版 世界大百科事典 「ヒメカイウ」の意味・わかりやすい解説
ヒメカイウ
water arum
wild calla
Calla palustris L.
北半球の寒冷な地域に分布するサトイモ科の湿地生多年草。ミズザゼンともいう。茎は湿地の地表をはうか水面に浮かび,長い葉柄(10~25cm)のある葉を出す。葉柄基部は茎を抱き,葉鞘(ようしよう)部の上部は葉柄から遊離した舌状片となる。葉身は心形から広卵形で,大きなもので長さ10cmあまりになる。夏,葉腋(ようえき)から葉柄よりも長い花茎を出し,白色で卵状の広く開いた長さ10cmほどの苞と,それよりも短い肉穂花序をつける。肉穂花序の基部のほうは両性花,上部は雄花を密集してつけるが,どちらの花も花被片は退化して,ない。果実は赤熟し,内に5~10個の種子がある。本州北部から北海道の山地の湿地に分布し,ユーラシア,北アメリカ大陸北部に広く分布する。湿地や池に観賞植物として植えられることがある。茎はつき砕いてデンプンを採り(そのままではえぐい),食用にされることがあるが,重要ではない。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報