改訂新版 世界大百科事典 「ビエルコポルスカ」の意味・わかりやすい解説
ビエルコポルスカ
Wielkopolska
ポーランド中西部に広がる歴史的地方名。〈大ポーランド〉の意。シロンスク,ポモジェ,マゾフシェ,マウォポルスカの各地方に囲まれる広大な平野の地方である。オーデル(オドラ)川水系のバルタ川,ノテチ川,バリチ川などが形成するビエルコポルスカ・クヤビ低地にあたり,19世紀にはポズナン大侯国と同義であった。地形的には,氷河期に形成された幅広い氷食谷と氷河堆積物からなるモレーン丘が東西方向に並列するが,地表はおおむね低平な平野である。ビエルコポルスカは現在,ポーランド有数の農業地域,肥沃な穀倉地帯となっている。農業は大量の化学肥料や農業機械の投入,土地改良によって集約性と生産性が高い。小麦,テンサイ,大麦,ジャガイモ,ライ麦のほか飼料用作物も多く,畜産も盛んである。個人農中心の農家の平均経営規模も大きい。鉱産資源は,褐炭,岩塩(イノブロツワフ)を産し,コニン,コウォ,ツレクなどに褐炭利用の火力発電所が建設され,各工業都市へのエネルギー基地となっている。ポーランド第5の都市ポズナンはビエルコポルスカ地方の経済・文化・商業・交通の大中心地である。ほかに主要都市として,ビドゴシュチ,トルン,ゴジュフ・ビエルコポルスキ(人口12万5787。2004)があるほか,ジェローナ・グーラ(11万8707。食品・繊維・金属工業),ポーランド最古の首都グニェズノ,古い〈琥珀(こはく)の道〉に沿う古都カリシュ(10万8666),交通の要衝オストルフ・ビエルコポルスキなどがある。
執筆者:山本 茂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報