日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビビエーナ」の意味・わかりやすい解説
ビビエーナ(一家)
びびえーな
Bibbiena
イタリアの舞台美術家、建築家の一族。17世紀後半からヨーロッパ各地の宮廷を中心に、祝祭、演劇、オペラの演出、舞台装置、劇場建築にわたる広範な活動を通して、バロックの舞台芸術の発展に世紀的な役割を果たした。画家ジョバンニ・マリア・ガッリ・ダ・ビビエーナGiovanni Maria Galli da Bibbiena(1619―65)が一族の祖。その長子フェルディナンドFerdinando(1657―1743)は、パルマやウィーンなどの宮廷劇場で舞台美術にあたり、伝統的な遠近法による舞台中央の消尽点を、複数、左右非対称の位置に移行させた画期的な舞台装置を考案した。次子フランチェスコFrancesco(1659―1739)は、ベローナ歌劇場の設計をはじめナポリ、ウィーンなど各地で舞台装置、劇場建築に活躍した。フェルディナンドの次子アレッサンドロAlessandro(1687―1769)は、マンハイム宮廷劇場の建築で知られ、三男ジュゼッペGiuseppe(1696―1757)は、バイロイト宮廷歌劇場ほか、プラハ、ベルリン、ドレスデンなどで、四男アントニオAntonio(1700―74)は、ボローニャ市立劇場ほか、イタリア、東欧の諸都市で活躍した。フランチェスコの子ジョバンニ・カルロGiovanni Carlo(?―1760)は、リスボン王室劇場を建造し、ジュゼッペの子カルロCarlo(1725―87)は、父との共同の仕事のほか、ペテルブルグの冬宮劇場を建築、さらに各国で舞台製作にあたったが、すでに時代はバロックからロココへの推移を示していた。
[赤沢 寛]