エリザベス2世(読み)えりざべすにせい(その他表記)Elizabeth II

知恵蔵 「エリザベス2世」の解説

エリザベス2世

英国の国王。英国と旧植民地諸国15カ国の国家元首と、これらの国々を含む53カ国で構成する英連邦の長を務める。実名は、エリザベス・アレクサンドラ・メアリー。
1926年4月21日、国王ジョージ5世の次男、ヨーク公アルバート王子(後のジョージ6世)の長女として、ロンドン・メイフェア地区の母方の実家で生まれた。36年、ヨーク公の兄で国王のエドワード8世が離婚歴のある米国人女性への求婚を問題視されて退位、ヨーク公がジョージ6世として即位し、王位継承順位1位となる。52年2月6日、ジョージ6世の死により25歳で即位。「国民に親しまれる王室」を目指して精力的に公務をこなし、2015年9月9日、在位期間が63年と216日だった高祖母ビクトリア女王(1819~1901)を抜き、歴代国王の在位最長記録を更新した。英国国王としても最高齢。まじめで穏やかな人柄や、政治的中立を貫く姿勢は国民から根強い支持を得ている。
幼少期から、妹のマーガレット王女と共に家庭教師に学び、父親が国王になった後は、憲政史や法律、ラテン語について勉強し始め、将来の即位に備えた。
13歳で後に夫となる英国海軍士官でギリシャデンマーク、ロシア王家の血を引き、ビクトリア女王の玄孫に当たるフィリップ王子と出会い、一目ぼれをする。
第2次世界大戦中の40年、避難先のウィンザー城からBBCの子ども向けラジオ番組で初めて公開演説を行う。45年春、女子国防軍(ATS)に入隊し、二等准大尉となる。幹部訓練コースに参加して軍用車両の整備や運転、地図の読み方などを学ぶ。
47年、エジンバラ公フィリップ王子とロンドンのウェストミンスター寺院で挙式。48年に長男のチャールズ皇太子、50年には長女のアン王女を出産した。その後は60年に次男アンドルー王子、64年に3男エドワード王子が生まれている。
即位後の53年、ウェストミンスター寺院で戴冠(たいかん)式が行われた。沿道には300万人を超す人々が詰めかけ、世界各国にテレビ中継された。
90年代、チャールズ皇太子夫妻の不倫や離婚、アンドルー王子の別居や離婚、アン王女の離婚や再婚といった王室スキャンダルが続出し、97年にダイアナ元皇太子妃がパリで交通事故死した際は、バッキンガム宮殿に半旗を掲げなかったことなどで批判を受けた。国民から厳しい視線が注がれる中、バッキンガム宮殿の一部公開や王位継承制度の改正といった王室改革に取り組んだ。
即位以来、積極的に英連邦諸国や米仏などを外遊し、11年、英国の元植民地で長年対立してきたアイルランドを、37年の同国の独立後に英国国王として初めて、祖父に当たるジョージ5世以来100年ぶりに公式訪問した。双方の争いによる死者に哀悼の意を示し、和解への機運が高まった。
コーギー犬を好むほか、競馬の愛好家としても知られている。

(南 文枝 ライター/2015年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エリザベス2世」の意味・わかりやすい解説

エリザベス2世
エリザベスにせい
Elizabeth II

[生]1926.4.21. イングランド,ロンドン
[没]2022.9.8. スコットランドアバディーンシャー,バルモラル城
イギリス女王(在位 1952~2022)。フルネーム Elizabeth Alexandra Mary。ジョージ6世の長女。1936年,伯父エドワード8世(ウィンザー公)の突然の退位により王位継承者となった。1947年11月20日,遠縁にあたる元「ギリシアおよびデンマーク王子」のフィリップ・マウントバッテンと結婚。1948年11月14日長男チャールズ(→チャールズ3世),1950年8月15日長女アン誕生。1952年2月6日オーストラリア,ニュージーランド訪問の途中,アフリカのケニアでジョージ6世の急死にあい,急きょ帰国,2日後に王位継承を宣言し,25歳でイギリス国王(女王)に即位した。次いで 1953年6月2日ウェストミンスター寺院で戴冠式を挙行。以後イギリス国王としての多忙な政務のかたわら,イギリス連邦だけではなく諸外国への公式訪問を数多く行ない,1975年5月には日本を訪問した。1960年2月19日二男アンドルー,1964年3月10日三男エドワードが誕生し 3男 1女の母親となり,1977年11月にはアンの男児誕生により初孫を得た。チャールズとダイアナの離婚後,特にダイアナが死亡した 1997年以降,王室に対する国民感情が悪化したことをうけ,今日的な開かれた君主制を提示しようと試み続けた。2022年2月6日,イギリスの君主として最長となる在位 70年を迎え,6月にはプラチナ・ジュビリーと呼ばれる祝賀行事が挙行された。

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現代外国人名録2016 「エリザベス2世」の解説

エリザベス2世
エリザベスニセイ
Elizabeth Ⅱ

職業・肩書
英国女王

国籍
英国

生年月日
1926年4月21日

出生地
ロンドン

本名
エリザベス・アレクサンドラ・メアリー〈Elizabeth Alexandra Mary〉

経歴
ヨーク公(のちの英国王ジョージ6世)と母エリザベス(同エリザベス王妃)の第1王女。1936年伯父の国王エドワード8世が離婚歴のある米国人シンプソン夫人との結婚を選んで退位したため、父のヨーク公がジョージ6世として即位。’47年11月20日ギリシャ王室の血を引くフィリップ・マウントバッテン大尉(エディンバラ公)と結婚。3男1女の母となる。’52年2月6日父王の死去により王位継承を宣誓、’53年6月2日戴冠。英国君主として63代目、6人目の女王となる。イギリス連邦の結合の象徴として世界各地を精力的に訪問し、王室外交を推進。’75年5月英国元首として初めて訪日。’86年10月訪中。’97年9月ダイアナ元妃の葬儀では生中継のテレビに出演し、異例のスピーチをした。2007年12月20日英国史上最高齢の君主となる。2010年ローマ法王ベネディクト16世と公式会談、カトリックと英国国教会の470年ぶりの和解となる歴史的出来事となった。2011年5月英国君主として100年ぶりにアイルランドを訪問。2012年2月6日即位60周年を迎えた。2015年9月には在位期間が63年と216日となり、英国王室史上最長の統治者となる。その気品と勤勉さから国民の人気は高い。

出典 日外アソシエーツ「現代外国人名録2016」現代外国人名録2016について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「エリザベス2世」の意味・わかりやすい解説

エリザベス[2世]
Elizabeth Ⅱ
生没年:1926-

イギリス,ウィンザー朝の女王。ジョージ6世の長女。王女時代,第2次世界大戦中に予備国防軍に志願して国民から慕われた。1947年ギリシア王室出身のフィリップ・マウントバッテン(エジンバラ公Duke of Edinburgh,1921- )と結婚。妹のマーガレット王女と二人姉妹で兄弟がなかったため,52年父王の死後即位し,翌年盛大な戴冠式が挙行された。国民の王室に対する期待が,大英帝国の頃とは著しく変化してきている現在,女王はイギリスおよびイギリス連邦の首長として,忠実にその象徴的任務に従い,国事に参加してスピーチを行うほか,世界各国を親善訪問し,75年には公式に日本を訪れている。夫君との間にはチャールズ,アンドルー,エドワードの3王子とアン王女がある。長男の皇太子チャールズCharles Philip Arthur George(1948- )は,81年ダイアナ妃と結婚し,77年の女王即位25周年祝典に続いて,国民の祝福を受けたが,96年に離婚。97年ダイアナ元妃事故死。2006年再婚した。
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20世紀西洋人名事典 「エリザベス2世」の解説

エリザベス2世
Elizabeth Ⅱ


1926.4.21 -
英国国籍。
英国女王。
ジョージ6世の長女で1947年ギリシア王室出身のエジンバラ公フィリップと結婚し、’52年父王の死により即位、’53年盛大な戴冠式が行われる。英国及び英国連邦の首長として公務をこなし世界各国を親善訪問し、英国外交の役割を果たしている。’75年には外交活動の一環として日本を公式訪問している。夫君との間にチャールズ、アンドルー、エドワードの3王子とアン王女がいる。

出典 日外アソシエーツ「20世紀西洋人名事典」(1995年刊)20世紀西洋人名事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「エリザベス2世」の解説

エリザベス2世(エリザベスにせい)
Elizabeth Ⅱ

1926~(在位1952~)

イギリス女王。ジョージ6世の長女。1947年エディンバラ公と結婚。52年即位,53年戴冠式を挙行。3男1女をもうけたが,チャールズ皇太子とダイアナ妃の離婚問題をはじめ,王室に対する社会の見方は厳しいものがあり,王室近代化のため種々の改革を行っている。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

367日誕生日大事典 「エリザベス2世」の解説

エリザベス2世

生年月日:1926年4月21日
英国女王

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のエリザベス2世の言及

【カナダ】より

…この原則とそれにもとづく内閣制度に関しても制定法はなく,内閣や首相の職席は政治慣習にもとづき存続しているものである。
[政治制度と政治過程]
 カナダはエリザベス2世女王を元首とする連邦制の立憲君主国家である。形式的に政治権力のすべての執行権は女王に帰属するが,〈君臨すれども統治せず〉というイギリスの憲法慣習がカナダでも踏襲される。…

※「エリザベス2世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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