エプスタイン(読み)えぷすたいん(英語表記)Sir Jacob Epstein

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エプスタイン」の意味・わかりやすい解説

エプスタイン
えぷすたいん
Sir Jacob Epstein
(1880―1959)

イギリスの彫刻家。ロシア・ポーランド系の両親の子としてニューヨークに生まれる。同地のアート・スチューデンツ・リーグで学び、ついで渡仏。パリで美術学校に学ぶと同時にロダンに師事し、また、ルーブル美術館で古代エジプト彫刻に興味をひかれた。1905年以来ロンドンに住むことになり、当時のフランス彫刻の前衛をイギリスに紹介することになった。08年、イギリス医学協会の建物のために18個の彫像を制作したが、これにはエジプトやアッシリアの影響と思われるものがうかがえる。また『創世記』『キリスト』など宗教的題材も多く手がけた。以後多くの作品を制作するが、その特徴の一つは直刻で、石彫塑像ブロンズなど、それぞれの材質を生のままに残し、強い感情と意志から出る写実を離れた形態のひずみであろう。保守的な当時のイギリス彫刻界に大きな影響を与えた。

[岡本謙次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エプスタイン」の意味・わかりやすい解説

エプスタイン
Epstein, Sir Jacob

[生]1880.11.10. ニューヨーク
[没]1959.8.21. ロンドン
アメリカ生れのイギリスの彫刻家。ニューヨーク,パリで学んだのち,1906年イギリスに移住。機械的形態の人体像がイギリス彫刻界に新風を吹込み,現代彫刻の先駆となる。当時の代表作は『削岩機』 (1913,テート・ギャラリー) 。その後,古典主義への傾斜を強め,抽象的フォルムと同時に自然主義的表現方法を併用し,対象の精神的緊張を表現。 17年頃からキリスト像など宗教的主題の作品が多く,『聖母訪問』 (26,ロンドン,ナショナル・ギャラリー) ,ランダフ大聖堂栄光のキリスト』はその代表作。また G.B.ショー,アインシュタイン,W.S.モームなどの多くの肖像彫刻は,性格描写の確かさから最も重要な作品とされる。

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