改訂新版 世界大百科事典 「フェストゥーン」の意味・わかりやすい解説
フェストゥーン
festoon
花,枝葉,果実,穀物等を帯状布で巻き,2点間に緩やかにつり下げた形を示す装飾。懸華(けんか)装飾,花綱(はなづな)装飾ともいう。石,スタッコ,ないしブロンズのレリーフ(浮彫),および絵として表され,主として古典様式建築のフリーズfrieze(水平装飾部材)または墓碑等に荘重感と記念性を強めるために用いられる。festa(〈祝祭〉の意)と同根の語で,祝祭用の花綱がヘレニズム時代の祭壇,神殿の装飾に転用され,ローマ時代に一般化した。ペルガモンの神域のプロピュロン,ミレトスの南のアゴラの大門のフリーズにみられる例は最初期に属する。西欧においてルネサンス,バロック,ロココの各時代には好んで用いられ,彫りの深い豊かな装飾として複雑な作例が知られる。なお,同種の文様は,中央アジアのミーラーン遺跡の壁画,インドクシャーナ朝のカニシカ王舎利容器,またガンダーラの石彫仏塔などにも見出され,東方への伝播がうかがわれる。
執筆者:日高 健一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報