改訂新版 世界大百科事典 「フォルマリアージュ」の意味・わかりやすい解説
フォルマリアージュ
formariage[フランス]
西欧中世の領主による領民への結婚の制限を指す用語。領主は,領民の人身への支配を貫徹するために,その結婚を制限しており,ことに,領主支配圏の外部に生活する者との結婚は,領民の移出や子どもへの支配権の錯綜を呼び起こすために,厳しい制約のもとにおかれていた。このように,領民が家族を構成することを原則として認めた上で,領主が支配下にある領民数の減少を防ぐために行う結婚の制限が,〈外への結婚〉を意味するフォルマリアージュと呼ばれ,領主の農奴への人身的支配の象徴でもあった。強力な個別人身的支配を特徴とする中世初期には,同じ領主に属する領民の間での結婚が多かったため,フォルマリアージュは史料にそれほど登場しない。人口の可動性が増加した中世盛期には,領域的支配を行う領主は当初は外部との結婚を禁止したが,領民側の抵抗によって,そうした結婚に際しての若干の貨幣徴収で満足するようになった。これは結婚税と訳されることが多い。その後フォルマリアージュはしだいに衰退しながら,部分的には近世まで存続した。
執筆者:森本 芳樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報