日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォーク」の意味・わかりやすい解説
フォーク
ふぉーく
fork
西洋料理で用いる道具。食物を突き刺して口に運んだり、切るときに食物を押さえるために、ナイフとともに食卓で使用する。ヨーロッパで食事にフォークを用いるようになったのは16~17世紀のことで、それまでは食事は手づかみが普通であった。フォークという名の道具は食事用ではなく、調理用で、鍋(なべ)の中から肉片を取り出したりするのに用いた。食卓に出された肉塊は、1人が代表してナイフで切り分け、個人個人は手でつまんで食べていた。個人用の食べる道具としてはナイフがまず用いられ、ついで16世紀後半にスプーンが普及した。フォークはさらに遅く、17世紀から18世紀にかけて各国で一般的に使用された。イタリアでは16世紀にすでにフォークが使用されていたが、イギリスに伝わったのは17世紀の初めである。イギリス人トーマス・コリアトが、イタリアからの土産(みやげ)として持ち帰った。しかし、当時のイギリスでは、フォークを使うことが喜劇に取り入れられる状態で、一般に普及するのは名誉革命(1688)以後である。フランスではさらに遅く、18世紀中ごろに一般化した。イギリスに伝わったころのフォークは、先が2本に分かれたもので、18世紀に3本になった形ができあがった。
東アジアの箸(はし)文化圏とは違い、長く手で食べる習慣のあったヨーロッパでは、手を清潔にすることを配慮したマナーがある。食前に手を洗う習慣、フィンガーボウルやナプキンの使用といったものはこれを示すものである。
[河野友美]
種類
フォークの種類は、食事用としての用途からミートフォーク(肉料理用)、フィッシュフォーク(魚料理用)、オイスターフォーク(カキ料理用)、デザートフォーク(またはサラダフォークともいう)、さらにフルーツフォーク、先の1本が幅広くなったケーキフォークなどがある。そのほか、料理のサービス用のサービスフォーク、肉切り用のカービングフォーク、調理用の大型のコックフォークなどがある。コックフォーク以外はナイフと対(つい)で使用するので、柄(え)の形や模様がそろえてある。ミートフォークはテーブルフォークともよび、一般の食事では、これだけでデザート以外のすべての料理を食べることが多い。
材質は金属が一般的で、高級品では純銀製や洋銀に銀めっき製があり、よく普及しているのはステンレス製である。
[河野友美]
『宗任雅子著『箸とフォーク』(1988・三嶺書房)』▽『山内昶著『食具』(2000・法政大学出版局)』